2011年8月8日(月)「しんぶん赤旗」
メキシコの貧困層
4年で1300万人増
政府に批判→「新自由主義の経済モデル転換を」の声
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【メキシコ市=菅原啓】メキシコの貧困対策の効果を分析する政府機関、全国社会開発政策評価会議(CONEVAL)が7月末に発表した報告によると、貧困層は2年間で320万人増加し、5200万人に達しました。政府に対する批判や経済モデルの転換を求める声が強まっています。
評価会議が採用している貧困層の基準は、(1)収入が日常生活に必要な最低経費を下回っていること、(2)社会保険や住宅状況など「社会的権利」6項目のうち3項目以上で不足がある人、とされています。極貧層は、収入が最低食料品購入費用を下回る場合とされ、「社会的権利」については貧困層と同様の基準です。
最も貧困が深刻な世代は65歳以上の高齢者層。低収入に加え、「社会的権利」項目が一つでも不足している人の割合は77・1%に達しました。
評価会議は、貧困層が増えた原因について、世界的な経済危機の影響によるもので、危機が収束するにつれて、貧困層は減少するとの見方を示しています。カルデロン大統領は、医療サービスなどを拡充した結果、極貧層は2年間で0・2ポイント低下したことを成果としてあげています。
しかし、研究者からは、貧困基準に社会的権利項目を加えることで低収入でも貧困層に算入しない政府のやり方は、実態をごまかすものだとの指摘が出ています。
収入面だけでみると、貧困層にあたる人は2008年の5060万人から5770万人(2010年)に増えています。全人口の51・3%にもなります。カルデロン大統領が就任した2006年の4470万人(42・6%)と比べると1300万人の増大です。
中道左派の野党民主革命党(PRD)のリオス・ピテル下院議員団長は、現政権が米国との経済関係を優先し、国内市場の拡大を軽視してきたとして、「経済モデルと間違った社会政策の崩壊をしめすもの」と指摘。雇用創出という公約を達成できず、失業を増やしてきたカルデロン大統領を「失業大統領だ」と厳しく批判しています。
カトリックの全国司教会議も、貧困の増大について「メキシコが必要としている社会開発を実現する別のメカニズムの実行が急務だ」との声明を発表。有力紙ホルナダは、「改革しなければならないのは、四半世紀前にメキシコに押し付けられた(新自由主義)経済モデルだ」との社説を掲げ、政策転換を強く求めています。
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