2011年8月6日(土)「しんぶん赤旗」

個人医療情報を販売

製薬企業などに請負業者

患者特定の懸念も 厚労省が指導文書


 個人の医療情報が詳しく記載されたレセプト(診療報酬明細書)のチェックを健康保険組合などから請け負っている民間事業者が、個人情報に当たる記載情報を第三者に売っている懸念があるとして、厚生労働省が5日までに指導文書を出したことがわかりました。個人情報保護法に触れる懸念があるとして、健保組合などに個人情報の適切な取り扱いを求めています。

 指導文書で厚労省は、レセプトや特定健診結果に記載された個人情報に当たり得る情報を、患者本人の同意を得ないで「営利目的等のために第三者へ売却又は譲渡している事例がある、との情報が複数寄せられて」いることを明らかにしています。

 医療保険の保険者である健保組合は、レセプトの点検や健康診断のデータ分析を民間の事業者に委託しています。その際、事業者がレセプト情報を集積(データベース化)し、独自に利用するのを認めるかわりに、健保組合が業務委託費の値引きを受ける例もあるのではないかと厚労省はみています。事業者は、集積した情報を製薬会社などの第三者に渡すことで利益を得るという構図です。

 レセプトには患者氏名、生年月日、保険加入情報、受診医療機関、病名、処置、使用薬などが記載されています。保険者が、法律で認められた場合や本来の目的以外で第三者に提供するには、患者本人の同意が必要です。ただし厚労省は、「特定の個人が識別できない場合は個人情報に当たらず、同意がなくても違法ではない」としてきました。

 しかし、データ分析の民間事業者が「氏名や生年月日を削除すれば、個人情報にならず第三者に売っても問題ない」などとして、健保組合や医療機関に情報提供を求めていた事例を7月になって把握。氏名や生年月日などを削除しても、受診医療機関名などを他の情報と照合すれば特定の個人を識別することは可能で、厚労省は「個人情報に当たる」としています。

 これまでに、そうした形で個人が特定できる医療情報が、本人の同意なく第三者に売られた可能性について、同省は「ゼロではない」としています。

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