2011年8月6日(土)「しんぶん赤旗」
福島原発事故
仮払い45日先延ばし
東電救済のため 民自公「修正」で
東京電力による福島原発事故の被害者への迅速で全面的な賠償が切実で急務となっています。こうした被災地の声に応えるといって、民主、自民、公明などの賛成で原子力損害賠償支援機構法と、国が東電に代わって仮払いを行う法律がこのほど成立しました。しかし、3党による「修正」で賠償金支払いが1カ月以上も遅れる危険が改めて浮かび上がっています。
これまで支払われた賠償は約521億円の請求に対し78億円(8月3日まで)。風評被害についても150億円以上の請求に対し11億円が支払われただけです。機構法は、国などが出資して機構をつくり、東電に公的資金を投入して支払いを促進させるとしていました。
ところが、民自公3党「修正」は、同機構が東電に代わって賠償の本払いと仮払いができるようにしました。併せて「公布から十日後」としていた仮払い法案の施行日を「四十五日以内」と1カ月以上も先延ばしてしまいました。仮払いを機構に行わせるために、機構の発足に合わせたものです。
仮払い法はもともと、東電の賠償支払いが遅すぎるので、国がまず立て替えてでも仮払いを行うべきだといって、自民、公明が提案し、民主も加わったものでした。仮払い法提出者の、自民の佐藤正久参院議員は「いかに被災者の方がたに早く十分なお金が行くということが大事」と述べていました。機構法案に関し、福山哲郎官房副長官も「迅速な支払いで一日も早い安心を持っていただく」(7月14日の参院復興特別委員会)と言ってきました。
すべて国任せ 共産党は反対
日本共産党は仮払い法案について、仮払いの対象が原子力損害賠償紛争審査会の指針に基づく被害者に限定されているとして反対しました。しかし、佐藤氏は、「今から新たに基準をつくるとかなり時間がかかる」といって成立を急いだのです。それを「修正」で仮払い実施を先延ばしするとは無責任といわれても仕方ありません。
原子力損害賠償支援機構法も、東電に全面賠償を果たさせるものではありません。日本共産党は、国民負担によって東電と大株主、大銀行などを救済するものだと指摘。何度でも公的資金を投入することができる一方で、東電の大株主や大銀行など利害関係者の負担と責任はいっさい問われない異常な救済策だとして反対しました。東電についても3党修正によって賠償資金から支払い実務まで何もせず、すべて国が面倒をみる仕組みとなっており、至れり尽くせりの東電救済策にほかなりません。
■関連キーワード