2011年8月5日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
病院の「院」は、特定の人々を収容する施設や建物をさします。辞書で確かめました▼辞書に説明が載っている「院」の意味は多い。垣をめぐらした構えの大きな家。宮殿、官舎の呼び名。上皇、法皇、女院の御所…。これらは気位が高く、庶民がおいそれとは入れないようなところです▼原子力安全・保安院。略して保安院。やはり、名前だけ聞くと、いかにも立派ですました感じがします。経済産業省・資源エネルギー庁の“特別の機関”とされるだけのことはあります。さらに、「安全」に「保安」を重ね、人々に安心を約束しているような名前です▼しかし、“特別の機関”とはいえ、独立しているわけではありません。経産省のもとに資源エネルギー庁があり、そこに属する役所です。「安全」と「保安」も、念には念を入れて連ねているのではありません。「安全」は原子力の安全を、「保安」はガスや火薬、鉱山の保安を図る、別々の仕事を表します▼経産相が、省の事務次官、保安院長、資源エネルギー庁長官を辞めさせます。原発の安全を保てず、あげくに各地の説明会で“原発は安全”と発言するよう仕向ける“やらせ”までしていた保安院です。上司を含め、責任は重い▼が、業界と結んで原発づくり推進の経産省のもとに安全追求の機関をおく、「原子力村字(あざ)保安院」の矛盾は解けません。「院」は、「戒名にそえる語」も意味します。もはや命脈つきた保安院が退場し、独立の機関ができない限り、人々の安心はありません。