2011年8月5日(金)「しんぶん赤旗」

主張

経産省人事

国民の批判無視できなかった


 政府が、経済産業省の松永和夫事務次官、寺坂信昭原子力安全・保安院長、細野哲弘資源エネルギー庁長官らの更迭を検討していることが明らかになりました。自らも辞意を表明している海江田万里経済産業相が公表しました。

 原子力行政に関わる官僚トップの3人がそろって更迭されるのは異例です。東京電力福島第1原発の事故とその後の対応に加え、相次いで明らかになった国主催の原発説明会での保安院の「やらせ」問題や資源エネルギー庁のメディアに対する不当な監視など、国民の批判を無視できなかった結果であることは明白です。

原発政策の行き詰まり

 記者会見で更迭を明らかにした海江田経産相は「人心を一新する」とのべました。「1カ月前から考えていた」と、「やらせ」問題の発覚などとは別だと印象付けようとしましたが、無関係だと受け止める人はまずいません。電力会社と一体で原発建設を推進してきた、経済産業省の原子力行政が行き詰まったことは明白です。

 経済産業省は原発建設の、文字通り推進体です。経産省の外局の資源エネルギー庁がエネルギー計画をつくり、各電力会社に原発建設を求めてきました。資源エネルギー庁が原発推進に都合が悪いメディアの監視までしていたことも明らかになりました。電力会社を監督する安全・保安院が原発推進の経産省の一部門とされていたのでは「規制機関」の役割を果たせないのは明白です。

 実際、東電福島原発事故の収束のめども立たないのに、保安院が全国の原発に小手先の「緊急対策」をとらせただけで「安全」を宣言し、定期点検で休止中の原発再稼働を認めようとしたなどというのはその最たるものです。「緊急対策」は非常用の電源車を追加したり原子炉建屋が水素爆発しないよう電動ドリルを準備したりというものにすぎません。地震や津波に対処できないのは明らかです。

 そのうえ九州電力の「やらせ」メール問題に関連して、保安院自身が電力会社に参加者の動員や質問の準備など「やらせ」を指示していたことが明らかになりました。一部では“泥棒を捕まえてみたら警官だった”とまで酷評されましたが、原子力安全・保安院が骨の髄(ずい)まで原発推進の立場に立っていたことは明らかです。

 政府は原子力安全・保安院を経済産業省から切り離し、環境省の外局にするなどの検討も始めていますが、もともと原発を規制する機関としての資格をまったく失っている保安院をそのままの状態でいくらトップをすげかえ所属を付け替えても、安全を強化することはできません。日本共産党の志位和夫委員長が要求したように、現在の保安院は解体し推進機関からも電力会社からも独立した機関を新たにつくる以外ありません。

原発からの撤退決断を

 大切なのは政府が危険な原発からの撤退を決断することです。そうしてこそはじめて新たにつくる機関が、「原発ゼロの日本」を目指す方向に沿った、国民の安全を守る機関になることができます。

 政府が原子力安全・保安院の経産省からの分離を言い出したり、原子力行政のトップを更迭するのはこれまでの原発政策が破綻したためです。原発からの撤退の決断を遅らせるべきではありません。





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