2011年8月4日(木)「しんぶん赤旗」
福島第1原発
下請けに危険手当検討
東電、党いわき市議に回答
放射性物質による高線量被ばくが深刻化する福島第1原子力発電所事故の収束作業に従事する「協力会社」などの作業員に対し、東京電力が「危険手当」の支給を検討していることが3日、分かりました。日本共産党の渡辺博之いわき市議の問い合わせに東電本店労務人事部が明らかにしたもの。
同市議によると、東電は同原発事故の収束作業で、タイベック(防護服)、マスクなど被ばく対策が必要な作業に従事する社員については日額で400円から3300円の危険手当を支給していると説明。
発注先の「協力会社」などの下請け作業員への手当については「発注先の判断にまかせてきた」と述べたといいます。
そのうえで、東電は「発注先の判断とは別に手当を考慮すべきとの考えもあり、検討中である」と話し、支給方法については、定期的に支払う危険手当とするか、一回限りの支払いとなる一時金とするかは未定としています。
渡辺市議は4日、日弁連主催の「原発労働問題シンポジウム」(午後5時開会、弁護士会館)で危険手当問題など原発労働者の実態について報告します。
解説
労働環境改善も早く
福島原発から10キロ圏内での津波による犠牲者の遺体捜索にあたる警察官や自衛隊員には「危険手当」が支給されました。そのため収束作業にあたる民間業者や作業員からは「高い放射線量の現場で多量の被ばくが避けられない原子力施設の建屋内や周辺での作業を強いられながら、危険手当がないのは納得できない」との声が事故直後からあがっていました。
一方、東電にとって収束に向けた作業員確保は待ったなしの課題です。
これまでの定期検査などで原発を知りぬく作業員は事故直後からの緊急対応による電源確保のためのケーブル敷設作業などですでに高線量を被ばくし、原発から火力発電などに移っています。
建屋周辺での放射線量は依然高く、原子力安全・保安院と東電は、今後、福島第1原発で、通常の被ばく線量の上限である50ミリシーベルトを超える被ばくが予測される作業員数を約2000人と試算しています。
東電が、下請け作業員への「危険手当」支給の検討を迫られている理由がここにあります。
「危険手当」の支給はもとより、夏場の熱中症対策など現場作業員の労働環境の改善は、事故の収束と「廃炉」にむけた要員の確保と育成のためにも強く求められています。 (山本眞直)