2011年8月4日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 ことしも、弘前ねぷた祭り、青森ねぶた祭りが始まっています。東日本大震災の復興への願いを込めて▼七夕の行事の一つ、実りの秋の農作業を妨げる眠けを払う儀式に、お盆の習わしも合わさったというお祭りです。「ねぷた」「ねぶた」の語のいわれには、いくつかの説があるようです▼もとは「ねぶたい」(眠たい)との説は、眠けを流す行事ですから分かりやすい。「根の国のふた」ともいわれます。根の国は、死者の魂が行く黄泉(よみ)の国。飢えや伝染病で十分に弔われないまま逝った人々の、うらみを恐れてふたをする、というわけです▼祭りの興った津軽ではありませんが、そんなきびしい風土の青森県の詩人に、大塚甲山がいます。甲山は、八甲田山からとった筆名です。1880年に上北の浦野館村、今の東北町に生まれました。浦野館村は、東北で娘の身売りが相次いだ、後の1930年代の凶作がひどかった地です▼さて、大塚甲山は各地を放浪し、東京で社会主義に目覚めます。日露戦争が近づいているころでした。幸徳秋水あての手紙に書いています。「我は、国家なる名と、資本家なる名とを地上に絶滅し、平和なる楽園を建設せんために…」▼後には石川啄木と比べられるほどの人でしたが、不遇のうちに故郷へ帰り、31歳で亡くなりました。祭りの熱気の中で不戦を誓う日本の夏。彼の反戦詩は、今も心をうちます。「ああ玉の緒(=命)を失いて、/広き領土を得ようより、/我等は村の草陰に、/只(ただ)平和なる夢を見ん」





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