2011年8月3日(水)「しんぶん赤旗」

主張

11年版「防衛白書」

震災支援の見返り 同盟強化か


 民主党政権になってから2度目の「防衛白書」を防衛省が発表しました。民主党政権が昨年12月に決定した「防衛計画の大綱」を受けた白書でもあります。

 今年の白書は東日本大震災で自衛隊と米軍が共同して支援にあたったことを「特集」として冒頭に置き、日米軍事同盟の強化がいかに重要かを強調しているのが特徴です。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故という未曽有の災害にあたって国の総力をあげて支援し、各国の支援を受け入れるのは当然です。大震災支援の見返りに憲法違反の軍事同盟を強化するなどというのは許されません。

被災者の苦しみよそに

 白書は、大震災の被災地で支援にあたった米軍の「トモダチ作戦」と自衛隊の共同作戦を「今後の日米同盟の更なる深化に繋(つな)がるものとなった」と自賛しています。日米同盟は軍事同盟です。いまなお多くの被災者が苦しんでいるのをよそに、大震災の支援をテコに軍事同盟を強化・拡大するのはあまりにも被災者をバカにした話です。

 菅直人首相や北沢俊美防衛相は米軍への「感謝」をくりかえしますが、大震災で国際社会が助け合うことと、軍事同盟強化はまったく別問題です。7月29日現在で日本は163カ国・地域と43国際機関から温かい支援を受けています。日本も海外で大震災があれば人的・物的支援を実施します。米軍の支援だけをことさら持ち上げ軍事同盟の強化に利用するのは、他の支援国にも失礼な話です。

 白書は、6月の日米安全保障協議委員会(日米軍事外交閣僚協議、2プラス2)が、米軍の統合部隊と自衛隊統合部隊が「トモダチ作戦」を指揮する共同調整所のもとで支援活動を進めた今回の経験を、「将来のあらゆる事態への対応のモデルとなる」とのべたことをあらためて持ち出しています。「あらゆる事態」とは、アジアであれどこであれ、日米一体で海外での戦争をたたかう場合を含めてのことです。震災支援を軍事活動に直結させる狙いは危険です。

 白書は「防衛計画の大綱」が採用した「動的防衛力」がイラク派兵のような「国際平和協力活動」を「支える」ものだとものべています。「動的防衛力」構想は海外派兵態勢の強化策にほかなりません。「自衛隊と協力して、その域外作戦能力を向上させていく」(米統合参謀本部報告)という米国の軍事戦略に従い、海外での戦争への備えを強める危険性は明白です。

 白書が、「高圧的とも指摘される」などといって中国や北朝鮮の「脅威」をもちだし、日米軍事同盟強化を正当化しているのは、戦争でなく外交で問題を解決するという世界の流れに反します。

南西地域軍事化の危険

 今回の白書が、沖縄本島の軍事機能の強化に加え、九州南方から沖縄本島西方までの南西地域を軍事化しようとしているのも見過ごしにできません。

 防衛省は、台湾に近い与那国島や宮古島などに陸自部隊を配備し、鹿児島県種子島沖12キロにある無人島の馬毛島を米空母艦載機の離着陸訓練基地にする一方で、「各種事態」に備えた自衛隊の作戦支援基地にしようとしています。近隣諸国との間で緊張をたかめることにもなりかねません。それこそ大震災で日本を支援した、世界の国々の願いにも反するものです。





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