2011年7月31日(日)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 あすから8月。人々が、とりわけ切に平和を願う8月。佐村河内(さむらごうち)守さんの「交響曲第1番《HIROSHIMA(ヒロシマ)》」を京都で聴いた体験を書いたのは、昨年の8月です▼秋山和慶さん指揮の京都市交響楽団による、80分を超える曲の初の全曲演奏でした。1年前、こんな感想を記しました。「世界を闇に一変させるような音」「懐かしい旋律が浮かんでは消え、深い祈りに包まれてゆく」▼そして、終楽章。「頂点へとのぼりつめる管弦楽の強奏とともに、鐘が打ち鳴らされる。とむらいながら、新しい夜明けを告げるような鐘の音」…。CDに記録されればいいのだが、と思っていました▼最近、CDが出ました。大友直人さん指揮する東京交響楽団の、録音のための演奏です。録音した日は、東日本大震災の1カ月後。終楽章にさしかかり、会場を3・11以来最大のマグニチュード7の余震が襲いました。しかし、指揮者も楽員も誰も動じず、曲に心を奪われ、没入していました▼佐村河内さんは、広島で被爆した両親のもと、1963年に生まれました。《HIROSHIMA》の着想から完成までの23年の間、「広島」と向き合い、肉体と精神の危機に立ち向かいました。貧困。原爆を連想するような耳鳴り音が絶えずとどろく頭鳴症。失われた聴覚▼CDを聴いていると、「広島」と大震災のありさまが重なり、やがて気づきました。世界中の人に聴いてほしい音楽。ヒロシマは、世界の破壊と苦しみの象徴なのだ、と。





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