2011年7月31日(日)「しんぶん赤旗」

主張

保安院の「やらせ」

規制機関の分離は待ったなし


 原子力発電所を監督する原子力安全・保安院が、原発推進の経済産業省と一体でまともな役割が果たせるはずはないと思っていても、これほどひどいとは知らなかったという国民も多かったのではないでしょうか。国が主催したシンポジウムや説明会で、安全・保安院が電力会社に命じて「やらせ」を繰り返していた問題です。

 さすがに菅直人首相も「事実だとすれば極めて由々しき問題」といいましたが、ことばで批判するだけではすまされません。真相を徹底究明するとともに、懸案になっている、規制機関の分離と強化を直ちに実行すべきです。

「同じ穴のムジナ」と

 「『国も東電も同じ穴のムジナ』だと思っていたが、実は国そのものが本当の“ムジナ”であることがはっきりしてきた」

 いまから10年近く前、東京電力が福島原発などで重大な原発のトラブルを隠していたことが発覚し、実は関係者から経産省や保安院に内部告発が寄せられていたのに放置していたことが明らかになったことについて、当時の福島県知事が語ったことばです。今回の保安院の「やらせ」は、この言葉通りの実態を浮き彫りにしました。

 調査のきっかけになったのは九州電力の「やらせ」メール問題です。玄海原発の再稼働に向けた国主催の説明会で、九電が関係会社の社員などに賛成のメールを送るよう依頼したというものです。経産省・資源エネルギー庁が同様の働きかけがなかったか各電力会社に調査を求めたところ、保安院自身が「やらせ」を指示していたことが明らかになりました。

 中部電力では2007年に静岡県御前崎市で開かれた浜岡原発4号機でのプルサーマル発電をめぐる国主催のシンポジウムで保安院が参加者を動員し、「反対派のみとならないよう」質問を作成し、地元の方に依頼するよう指示していたことが明らかになりました。中電では参加は組織したものの、「特定の意見を表明するよう依頼する」ことはさすがにできないと保安院に回答したといいます。

 四国電力では2006年に愛媛県伊方町で開かれた伊方原発3号機でのプルサーマル発電をめぐる国主催のシンポジウムで、保安院が参加者の動員を指示。四電は社員などを組織したうえ、地元からの参加者には「発言の例」を作成して発言を依頼していました。

 経産省の調査は期間を限ったもので、明らかになったのは氷山の一角です。原発の規制機関であるべき安全・保安院が、推進機関である経産省の一部局となり一体になっていることの有害さを、もっとも醜悪な形で浮き彫りにしたものです。危険性が指摘されているプルサーマル発電についての国主催の説明会で、賛成の立場から参加を組織させるなど、住民の意向を偽装し、国民世論を欺く、二重三重に許されないものです。

経産省まかせではなく

 「規制機関」を「推進機関」と分離し原発を監督することは、国際的な条約でも定められた原則です。菅政権も、原子力安全・保安院を経産省から切り離すとしていますが、独立した規制機関の強化は一刻の猶予も許されません。

 「やらせ」問題の調査を、経産省にまかせることはできません。まず国会に関係者を招致し、徹底して真相を明らかにすべきです。





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