2011年7月31日(日)「しんぶん赤旗」

ノルウェー連続テロなぜ

憎悪あおる右派

背景にイスラム嫌悪感情


 ノルウェーの首都オスロ中心部と郊外のウトヤ島で起きた連続テロ事件(22日)から1週間余りがたちました。これまでの調べによると、テロはイスラム教を憎む男の単独犯行とされます。しかし事件の背景としては、欧米諸国でのイスラム教徒の増加を憎悪する右派勢力の動きや、市民の間でのイスラム教徒への嫌悪感や恐怖感の広がりがあると指摘されています。 (ロンドン=小玉純一)


 “(与党)労働党はイスラム教徒を大量輸入し、ノルウェーを裏切った。(私は)マルクス主義者とイスラム教徒による植民地化からノルウェーと欧州を救うために行動した”

 ノルウェー人のブレイビク容疑者(32)は裁判所の審理で、犯行の動機をこう語ったといいます。

 容疑者は、インターネットサイトでも自分の考えを披歴してきました。▽欧州の生き残りにとってイスラム教は脅威だ▽マルクス主義が大学、メディア、政党をコントロールしている―。英紙ガーディアン25日付は、「こうした極端な考えは欧米の極右のブログの中でばらまかれている」と指摘しました。

広がる恐怖感

 オスロの文化施設「文学の家」館長のミーレ氏は、同紙への寄稿で次のように述べています。

 「人種差別集団のウェブを一見すれば、イスラム教徒への憤りを見てとれる」「容疑者はインターネットの反イスラム集団のコミュニティーに自分のイデオロギーを求めた」

 ノルウェーの主要日刊紙アフテンポステンのアマス氏(文化・論説編集委員)は、「容疑者の主張と理論的政治的にあまり違わない寄稿文を毎週読んだ」と体験を語り、「ノルウェーの人の間には目に見えない反イスラム感情がある。それは、イスラム原理主義者によるテロの脅威を伴っている」と指摘しています(英日曜紙オブザーバーへの寄稿)。

 市民の間でイスラム教徒に対する恐怖感が広がる背景の一つには、2001年の米同時多発テロや05年のロンドン同時テロなど、この間にイスラム教を看板にしたテロが少なからず起きてきたことがあります。

戦争への関与

 これらのテロは、欧米諸国がアフガニスタン、イラクなどイスラム諸国に対して戦争を仕掛けてきたことを口実にしてきました。アマス氏は、ノルウェーがアフガン戦争に関与したり、新聞がムハンマド(イスラム教の預言者)の風刺画を掲載したりしたことが、テロリストネットワークがノルウェーを標的とする「脅威となっている」と指摘します。

 ノルウェーの人口は約485万人。移民はこの15年で3倍に増え、人口の1割を占めます。主にポーランド、スウェーデン、パキスタン、ソマリアからです。

 ミーレ氏は「不寛容、人種差別、憎悪に対抗するために、この事件を生かさなくてはならない」と決意を示しています。

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