2011年7月29日(金)「しんぶん赤旗」
原賠機構法案など高橋議員の反対討論
衆院本会議
日本共産党の高橋ちづ子議員が28日、衆院本会議で行った、原子力損害賠償支援機構法案と「仮払い法案」に対する反対討論は次の通りです。
福島県原子力損害対策協議会は21日、「全ての県民が放射線の見えない恐怖に長期間さらされている」「これまで築き上げてきた地域社会や地域経済の崩壊も危惧される危機的な状況にある」として、東京電力と国に対して、あらゆる損害への迅速かつ十分な賠償を求めています。
また、放射性セシウムに汚染された稲わらが全国各地で見つかっています。東京電力福島第1原発事故の収束は今なお見えないばかりか、損害と影響の広がりは、はかりしれません。
まず何よりも東電は、原発被害者への迅速で全面的な賠償をおこなうべきです。そのためには、ばく大な内部留保をはじめ全資産を放出し、株主、金融債権者などステークホルダーに責任と負担を求めるべきです。
ところが機構法案は、東電を債務超過させずに存続させることを大前提とし、政府と機構が「必要があれば何度でも援助」するという閣議決定を具現化したものであり、大株主やメガバンクの負担と責任をいっさい問わない、異様な東電救済策にほかなりません。
その一方で、賠償原資は国民負担でまかなうものとなっています。東電はじめ各電力会社が機構に拠出する負担金は、事業コストとされ電気料金の値上げに直結します。また、修正によって、原案65条に加え、51条を新設することで、2兆円の交付国債が不足した際に税金投入ができる仕組みを盛り込みました。これにより、事実上際限のない税金投入の仕組みがつくられたことは重大です。福島県の地元紙が指摘したように、「原発事故の賠償対象者が賠償金の一部を自分で支払う矛盾が生じかねない」と言わなければなりません。
第二に、支援機構法と仮払い法の一体化です。修正により機構が、賠償の本払いと仮払いをできるようになります。これによって賠償資金から支払い実務まで東電の負担が軽減されることになります。資金援助の前提となる特別事業計画も仮払いには必要ないため、文字通り東電は何もせず、すべて国が面倒を見るということになりかねません。
第三に、重大な問題は、法案が「原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保」を目的とし、将来にわたる原発事業の継続を前提としていることです。修正により「国の責務」を規定し「原子力政策を推進してきた国の責任」に言及しましたが、そのため、東電の負担と責任を軽減するというのは、本末転倒といわなければなりません。
国の責任は、「安全神話」をふりまいて原発を推進し、今回の事故を防ぎ得なかったことの反省にたって、東電に全面賠償を行わせ、原発政策を根本から転換することであります。福島県復興ビジョンが「原子力への依存から脱却」を明確に打ち出したように、県民の願いにこたえ、原発ゼロに向け期限を切った取り組みを進めることであります。
最後に、電力の安定供給というライフラインを人質に、実質破たんしている東電を無理やり救済し続ける必要はありません。
東電の全資産を可能な限り賠償にあてさせ、株主やメガバンクに責任と負担をもとめ、プラントメーカーなど、いわゆる原発利益共同体に社会的責任を果たさせきることです。東電や電力業界が積み立てる使用済み燃料再処理等積立金約2兆5000億円を取り崩し、原発推進のための核燃料バックエンド(後処理)費用として今後も電気代から積み立てられる16兆円などを活用すること、こうして、国の介入によって全面賠償と電力の安定供給は両立できる、このことを指摘して討論を終わります。