2011年7月27日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
高架の下に落ちて転がる五つの車両が、事故のむごたらしさを物語ります。生き残った人を救い出す活動が終わったあとも、行方不明の家族を捜す人がいます▼40人の死亡が確かめられた、中国・浙江省の高速鉄道事故。急停車していた列車に、時速120キロ近くで後ろから走って来た列車が追突した、といいます。ふつうでは考えられないような事故が、現実に起こってしまいました▼鉄道省が、落ちた車両の一部を解体し地中に埋めたりしたため、中国の人々の中で疑いが広がりました。「証拠隠しではないのか」と。中国国内だけでなく外国の人たちも、事故の原因をつきとめるよう求めています▼当然でしょう。「高速鉄道」とは、時速200キロ以上の列車をさします。いま新興国など多くの国で走らせる計画があり、そこへ日本やフランス、中国などが売り込もうとしています。「なぜ事故が?」は、各国にとって人ごとではありません▼大勢の人をいっぺんに運ぶ飛行機や鉄道の場合、いったん事故が起きると大惨事に陥る危険をともなっています。残念ながら大事故が発生したら、情報や教訓を世界中で交換し合い共有することが望ましい。悲劇を繰り返さないために▼日本の新幹線は開業以来47年、死亡事故を起こしていません。しかし、“新幹線は安全。大事故は起きない”との油断は困ります。チェルノブイリ事故に学ばず「日本は大丈夫」とあぐらをかいて崩壊した、原発「安全神話」のようなおごりの二の舞いはごめんです。