2011年7月25日(月)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
ペナルティーキック(PK)が決まる。選手が一斉に駆け出し、緑の芝の上に、青い固まりができた―。もう、何度も目にした光景です▼1週間前、サッカーの女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で日本が優勝を決めたシーン。実は、もう一つの感動の場面が隠されていました。このとき、歓喜の輪に加わらなかった日本選手がいました。決勝で1得点1アシストの活躍をした宮間あや選手▼彼女は、「PKは運。米国の選手に失礼だから」と、喜ぶことなく、相手のもとに歩みより、一人ひとりの健闘をたたえたのです。その様子を、ある米国選手が自国のテレビで明かしたそうです。米国代表のゴールキーパー、ソロ選手。宮間選手とは米プロリーグでチームメートでした▼「試合後、彼女(宮間)は喜びをあらわにしなかった。私たちが負けて、どれだけ傷ついていたか、わかっていたから」。そして、「その出来事は、本当に日本が尊敬すべき国だということをあらわしているでしょう」と▼力を尽くしてたたかった者同士の心の結びつき、思いやり、尊敬の念…。スポーツの持つ素晴らしさが、ここに凝縮されています。決勝は、女子サッカー史に残る名勝負でした。それは、スポーツの美しき心を見せてくれたという点でも▼ソロ選手は最後に言ったそうです。「アヤ、あなたは日本で初めてW杯を勝ち取ったのよ。私たちはいいから、早くお祝いしなさい」。優しい笑みを交わし合う、2人の姿が目に浮かぶようです。