2011年7月24日(日)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 『竹取物語』は、わが国でもっとも古い小説といわれます。さかのぼれば奈良時代の話が素材、と伝えられます▼しかし、色あせません。女性が主人公。賢いかぐや姫が、求婚してくる色と欲と権力に汚れた男性どもをきりきり舞いさせ、恥をかかせる小気味よさ。帝(みかど)の命令にそむいても「おそれ多いとは思わない」というのですから、明治憲法の時代なら不敬罪ものでしょう▼そして、なんといっても日本最古の空想科学(SF)小説です。かぐや姫のふるさとの月は、一種の理想郷に描かれます。地球よりずっと高度な文明をもって、人は年をとらず悩みさえない星です▼先日、日本舞踊と科学の共同作業と銘うつ「かぐや」の公演をみました。幕開け。広大な宇宙空間の最新映像を映し出します。月からみた青い地球が浮かぶ。やがて地上へ。天地のエネルギーを感じさせる群舞とあでやかな舞。和楽器の曲、現代風の歌、電波を音に変えたような雑騒音▼すべてが一体となって幕切れになだれこみ、ふたたび映像です。遠ざかる地球。限りない宇宙、星々の乱舞。物語は原作と多少違いますが、結びは同じです。帝が、月へ帰ったかぐやからもらった不死の薬を燃やします。“かぐやに会えないで、不老不死の薬などなんのねうちがあろう”▼物語の月と違い、地上では人の命が奪われ、悩みもつきません。けれど、かけがえのない命と生を大切にして、地球をどれほど美しく輝かせられるか。そんな思いで、遠ざかる地球を見守りました。





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