2011年7月23日(土)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
1936年のベルリンオリンピックは、「ヒトラーの大会」とよばれます。初ものも目立った大会です▼いまでは当たり前の、ギリシャからの聖火リレーは、近代オリンピック史上初めてでした。ラジオ中継も初。ドイツは、世界初のテレビ中継放送も、ベルリンオリンピックの機会を利用して試みました▼ナチス・ドイツの力と威信を、国の内外にみせつけよう。テレビ中継だってできるんだぞ。というわけで、権力とテレビは、当初から相性がよかったようです。第2次大戦後、テレビは電機会社のもうかる商品に育ち、世界中の家庭に広まります▼さて、「地デジ」です。24日が過ぎると、アナログ放送は止まり、画面が“砂嵐”に変わります。NHKに受信料を払っていても、災害情報や熱中症の危険度を知りたくても、番組を映してくれません▼生活保護を受ける世帯などは無償で地デジに切り替えられる事実もよく知らされないままで、数百万人のテレビ難民が生まれるおそれさえあります。新品のテレビを国民に買わせたい会社。地デジ移行を法律で強いる国。「もうけ」と「権力」がよりそいます▼もともと、テレビの「テレ」は、「遠い」「遠距離の」を意味します。テレビは、目に映らない遠くの事物をみたい人間の願いを実現する道具です。鮮やかに映る地デジは、すぐれた道具でしょう。しかし、国が新しい道具を使えと強制し、こぼれる人を勝手に切り捨てるとは、本末転倒です。ここにいたっても、憤りを抑えられません。