2011年7月22日(金)「しんぶん赤旗」

原発事故の教訓は何か――三つの角度から考える

外国特派員協会 志位委員長の講演


 日本共産党の志位和夫委員長が20日、外国特派員協会でおこなった講演と一問一答の内容は次のとおりです。


司会者のあいさつ

 きょうの発言者は日本共産党委員長の志位和夫氏です。志位氏は、東京大学で物性物理学を研究されてきました。共産党は一貫して原発に反対してきた唯一の政党です。福島原発事故の危機をうけて、再び強く原発を撤廃すべきだと唱えています。きょうは、どのように原発を撤廃させるのか、原発にとってかわるエネルギーをどうするのか、日本共産党の提案について詳しく説明してもらいます。


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(写真)スピーチする志位和夫委員長=20日、東京・外国特派員協会

安定冷却とはほど遠く、根拠のない楽観論は許されない

 きょうはご招待いただきましてありがとうございます。原発問題と日本共産党の立場について、お話をさせていただきます。

 東京電力福島第1原発の事故は、事故後4カ月たっていますが、なお深刻な事態が続いています。首相は、昨日、高濃度放射能汚染水を処理して原子炉冷却につかう「循環注水冷却」などをあげて、「ステップ1」を達成できた、「一定の収束方向がみえてきた」などとのべました。しかし事態は、安定的冷却とは程遠く、根拠のない楽観論をふりまくことは許されません。

 そもそも「循環冷却」などといいますが、汚染水処理システムはトラブル続きです。なによりも肝心の原子炉と核燃料の状態がわからないまま、いわば「ブラックボックス」に水を入れているというのが実態です。汚染水は閉じたループをめぐっておらず、一部は建屋の地下から外部に漏れ続けており、高濃度の汚染水が地下水となって拡散する危険があることが強く懸念されています。

 政府がなすべきは、根拠のない楽観論をふりまくことではなく、起こっている事態を客観的に把握し、最悪の事態も想定し、収束のためになしうるすべてのことを責任もって実行するということです。

日本ではびこっている「安全神話」――世界から見てどんなに異常か

 チェルノブイリ原発事故と並ぶ世界最悪レベルとなった福島原発事故から何を教訓として引き出すか。きょうは、三つの角度からお話をさせていただきたいと思います。

 第一の教訓は、「原発は安全」とする「安全神話」こそが、最も危険であるということが証明されたということです。日本ではびこっている「安全神話」が、世界から見てどんなに異常なものか。二つの象徴的な問題点を指摘したいと思います。

 一つは、スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故という二つの過酷事故をへて、1988年にIAEA(国際原子力機関)がシビアアクシデント(過酷事故)対策をとることを各国に勧告していたにもかかわらず、日本政府は、1992年の方針で、「日本ではシビアアクシデントは起こりえない」として、何の対策もとらなかったことです。

 この方針が基本にあるものですから、福島原発についても、わが党の議員が「地震と津波が同時に襲ったら全電源喪失という深刻な事態に陥る」と具体的に警告していたにもかかわらず、政府は何の対策もとりませんでした。

 二つは、1994年に結ばれた「原子力の安全に関する条約」にたいする態度です。この条約では、原子力発電の「推進機関」と「規制機関」の分離を各国に義務づけました。ところが日本では「規制機関」とされる原子力安全・保安院は、「推進機関」である経済産業省の一部門にされています。それとは別に原子力安全委員会という機関があり、「ダブルチェック」をおこなうということになっていますが、この機関には権限がありません。しかも現在、そのトップに座っている人物には、原子力の危険性にたいする見識がありません。これは国際条約違反であることは明瞭であって、欧米では考えられないことでしょう。

 わが党は、再三是正を求めてきましたが、分離の手だてがとられないまま事故が起きました。今回の事故にさいして、分離がされていないことの弊害が明らかとなり、保安院と原子力安全委員会が、どちらも原子力災害にたいする対応能力をもたないことが露呈しました。

再生産される「安全神話」――今度こそ根絶を強く求める

 今回の事故をふまえて、政府は、口の上では「安全神話」を反省しているかのようなことをいいます。しかしこの病弊はきわめて根深く、かつ再生産されています。

 それは定期検査中の原発の再稼働問題にもあらわれています。政府は、ごく小手先の「対策」をほどこしただけで「安全宣言」なるものをおこない、電力会社に再稼働を要請しました。それでは到底おさまりがつかず、追加の「安全テスト」をおこなうといっています。しかしその実施の主体は、電力会社と保安院と安全委員会です。この3者によるテストを誰が信用するでしょうか。

 根拠のない「安全宣言」で、原発再稼働をおしつけることはやめるべきです。わが党は、今度こそ、原発への「安全神話」を根絶することを強く求めます。

多くの人々がこの事故のなかに「異質の危険」を見ている

 第二の教訓は、原発という技術のもつ「異質の危険」が、原発事故をつうじてはっきりあらわれたということです。

 今回の原発事故をみて、日本と世界の人々は、他の事故にはみられない「異質な危険」をその中に見いだしていると思います。すなわち、重大事故が発生した場合、放射性物質が外部に放出されますと、もはやそれを完全に抑える手段は存在していません。

 被害は、「空間的」にどこまでも広がる危険があり、現に放射能被害は日本列島の各地に広がりつつあります。また被害は、「時間的」にもはるか将来にわたる危険性があり、とりわけ子どもたちの健康被害への影響が強く懸念されており、これは何としても食い止めなければなりません。さらに被害は、「社会的」にも、地域社会をまるごと存続の危機に追い込んでいます。六つの自治体が行政区まるごと避難対象区域にされました。私は、その一つの飯舘村を、震災後2回にわたって訪問しました。美しい花が咲き、緑豊かな土地です。しかし目に見えない放射能という脅威によって全村避難となりました。地域社会がまるごと存続の危機にあるのです。

 こうして、原発事故とは、ひとたびおきたら、被害を「空間的」「時間的」「社会的」に限定することが不可能な事故であり、このような事故は他に類をみることができません。これは、飛行機事故にもみられない、自動車事故にもみられない、まさに「異質の危険」といわねばなりません。

本質的に未完成で危険――すみやかな撤退の決断が必要

 これは何に起因するのか。それは、いまの原発の技術そのものが、本質的に未完成で危険であるというところに起因すると考えます。

 いま開発されているどんな型の原子炉も、核エネルギーを取り出す過程で、莫大(ばくだい)な「死の灰」を生み出します。しかし人類は、この「死の灰」を制御する手段をもちあわせていません。それをなくす科学や技術もありません。それを閉じ込めておく保障は存在しません。さらに、「使用済み核燃料」を安全に処理する方法は、まったく見当もつきません。このような「異質の危険」をもつ現在の原発技術は、はたして社会的に許容できるものなのか。それが問われているのです。私たちは、人類の科学・技術の現段階では、安全な原発などありえないと考えています。

 わが党は、今回の原発事故をふまえ、原発からのすみやかな撤退を政治決断すること、期限を区切って「原発ゼロの日本」をめざすプログラムを策定することを、政府に強く求めています。みなさんのお手元に、党として6月13日に発表した「原発撤退提言」の英訳をお配りしました。5年から10年以内に「原発ゼロ」を達成し、同時並行で自然エネルギー・再生エネルギーの爆発的な普及にとりくむことを具体的に提案しています。

「原発利益共同体」――“原子力村のペンタゴン(五角形)”

 第三の教訓は、なぜ日本のような世界有数の地震・津波国に、まともな安全対策もなしに、原発が林立するようになったのかという問題です。私は、その根底には、日本の政治の二つの歪(ゆが)みが横たわっていると考えています。

 一つは、日本経団連も関与しての「原発利益共同体」ともよばれている利権集団の存在です。原発は、1基つくるのに5千億円もかかるといわれるビッグビジネスです。その利益を享受しているのは誰か。電力会社、原発メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼・セメントメーカー、大銀行など一部の大企業と、原発推進の政治家、特権官僚、御用学者、そして一部のメディアです。

 この利権集団は、異論をすべて排除する「原子力村」とよばれる閉鎖集団を形成しています。これが「安全神話」の製造元となり、国民をウソで欺いて原発を推進し、巨額の利益をむさぼってきました。これは、“原子力村のペンタゴン(五角形)”とも呼ばれています。財界、政界、官僚、御用学者、一部メディアによる“ペンタゴン”です。

広告料によって買収された一部大手メディアに猛省を求める

 私が、深刻だと考えるのは、一部の大手メディアが、この利権集団の一員であるということです。

 原発事故が起こった当日、東電の勝俣会長は、マスコミ幹部を引き連れて中国旅行をしていました。記者会見で彼はこう問われました。「旅行の費用は東電持ちだったのか」。彼は、こう答えました。「マスコミ幹部への旅費は一部東電が出した」。要するにこの旅行は、マスコミへの「接待旅行」だったのです。記者会見でこうした重要なやりとりが交わされながら、大手メディアでこの事実を伝えたものは一つもありませんでした。

 1970年代、電力業界は、巨額の広告料を払って、大手メディアを次々に買収していきました。まず大型広告が現れたのは朝日新聞です。つぎに読売新聞が続きました。残された毎日新聞は、原発に反対する記事を抑えることを約束して、広告料を手にしました。こうして大手紙は総なめにされ、広告料のひもがつけられ、「安全神話」の媒体となったのです。「安全神話」をふりまく共犯者としての役割をはたした一部大手メディアに、私は、猛省を求めるものです。

 「原発利益共同体」の一員として、国民の安全を無視して利益をむさぼってきた勢力の責任は重大です。わが党は、これらの勢力にたいして、次のことを求めます。まずその責任を深く反省することです。そして原子力災害による被害の責任と負担を負うことです。

濃縮ウランも、原子炉も、アメリカに依存している

 いま一つ問題があります。

 日本の原子力開発は1950年代から始まりました。最初の段階から、アメリカから濃縮ウランと原子炉の提供を受け、アメリカのエネルギー政策に従属する形で、原発増設の道を突き進んできたのがその歴史です。それは今日もなおつづき、いまでも日本の原発で使われている濃縮ウランの73%は、アメリカからの輸入に依存しています。

 日本の原発の原子炉も、アメリカの「コピー製品」にすぎません。福島第1原発を設計した東芝の元技術者の小倉志郎氏は、事故直後、本協会で記者会見をされています。小倉氏は、この場で、「1号機着工時は、米国ゼネラルエレクトリック社(GE)の設計をそのままコピーしたので、津波を全く想定していなかった」と語りました。

 福島原発では、非常用電源が津波でまっさきに壊される地下に置かれていました。なぜそんなことをしたのか。ハリケーン対策という「米国式設計」をそのままコピーした結果です。その後につくられた原発も、アメリカの技術のコピーにすぎません。ですから、重大なトラブルが起こると自力で対処ができないのです。世界の主要な原発利用国で、独自に原子力技術を開発せず、「コピー製品」にたよっているのは、日本だけだと思います。そのことが今回の深刻な事故につながりました。

原発撤退のたたかいは、日本の政治の歪みを正すたたかい

 原発から撤退するたたかいは、日本の政治の歪みを正すたたかいにもなります。財界が中心にすわった「原発利益共同体」=“原子力村のペンタゴン”を解体するたたかいになります。エネルギーの対米従属をあらためるというたたかいでもあります。

 私たちは、国民的討論と合意で、「原発ゼロ」の日本をつくるために力をつくしたいと決意しています。ありがとうございました。(拍手)

特派員との一問一答

大手新聞が買収されていった経過は?

 質問 「朝日」が電力業界の買収の最初のターゲットになったと聞きました。私たちは「朝日」はリベラルで、「読売」は保守的で財界に近い新聞と認識していましたが。

 志位 大型広告が「朝日」から始まったのは、(電力業界側が)「朝日」がそのような新聞だと一般に見られていたことを考慮してのことだと思います。しかし、そこからはじまったことは事実なのです。「読売」がそれにつづいたのは、「読売」の社長だった正力松太郎氏が、原発を日本に導入した責任者(初代原子力委員長)だったという関係があったようです。「朝日」「読売」に定期的に広告が掲載されるようになると、「毎日」も広告を出してくれと要請します。当時、「毎日」は、原発に反対するキャンペーン記事を紙面に載せていました。そこを突かれて、「毎日」は電力会社側からこういわれます。「反対が天下のためになると思うのなら反対に徹すればいいではないか。広告なんてケチなことは、どうでもいいではないか」。そういわれて「毎日」は、原発の記事は慎重に扱うと約束し、原発の危険性を伝える企画も取りやめとなりました。

 こうして日本の大手新聞を総なめにしたというのが経過です。それらの新聞のなかには、福島原発の事故後、原発の危険を伝える報道を始めているところもあります。この変化自体は、良いことです。しかし、自分たちの果たしてきた歴史への反省は必要です。それは国民に対して、また事実に対して誠実な報道機関なら、当たり前のことではないですか。そのことを、私は、一言いっておきたいのです。

原発技術は本質的に未完成で危険とは?

 質問 志位氏のコメントはとても興味深いものです。原発の技術は未完成なものとの考えに同意します。日本が自由に原発を開発したら、よりよいものになったという話を聞いたことがありますがどうでしょう。

 志位 私たちが、現在の原発の技術は、本質的に未完成で危険といっていることについて、少し立ち入って説明いたします。

 この問題では、まず直接的には、「軽水炉」という炉のもつ不安定性という問題を指摘できると思います。「軽水炉」のしくみは、運転中はもとより、運転停止後であっても、常に大量の水で冷やし続けることによって、かろうじて安定を保つというものです。水がなくなった場合には、途端に炉心溶融という事態が避けられなくなります。水がなくなった場合に、それを解決して原子炉を安定的な方向にむけていく、原子炉としての固有の安定性をもっていません。それが今度の大事故でもあらわれました。

 なぜこういう炉が使われるようになったのか。それは、軍事の技術が転用されたからです。米国が初めて開発した原子力潜水艦・ノーチラス号に積まれた原子炉は「軽水炉」でした。軍事用ですから「安全は二の次、三の次」となりました。それを性急に「陸揚げ」して、商業用に使い始めたというのが今日の「軽水炉」のはじまりです。

 ただ、原発の技術的な未完成と危険性という場合には、もっと本質的な問題があります。それは、「死の灰」をつくらないような原発というのは、どこにも存在しないということです。いま開発されているどんな原子炉も、必ず莫大な「死の灰」を生み出します。いま実用化されている原子炉は、すべてウラニウムやプルトニウムを燃料に使っていますが、これらの燃料から核エネルギーを取り出そうとすれば、莫大な「死の灰」が生まれることは、自然科学の法則からいって避けることはできません。

 そしていったん「死の灰」がつくられたら、人類はそれを消す方法をもっていません。コントロールする方法ももっていません。ただ閉じ込めておくしかありません。しかし、安全に閉じ込める方法ももっていません。だいたい、「死の灰」の危険性がなくなるのに要する時間は、100万年といわれます。とほうもない時間を閉じ込める保障など、誰が考えてもありえません。それは必ず外界に漏れ出てくることになるでしょう。ここに、現在の原発の本質的に未完成で危険という問題の核心があります。

 日本の科学者が独自に取り組んだら安全なものができただろうかというご質問もありました。私は、ウラニウムやプルトニウムを燃料として使う原子炉は、どんな型のものであっても、莫大な「死の灰」の生成を避けることはできず、その意味で本質的に安全な原子炉をつくることは不可能だと考えております。

 「軽水炉」以外のさまざまな型の原子炉も研究されているようですが、これは、どれも研究の段階であって、完成されたものではありませんし、実用化されているものでもありません。私たちは、そこにこの問題の活路があるとは考えていません。

首相の「脱原発」発言をどうみる?

 質問 菅直人首相の「脱原発」発言についてのお考えは?

 志位 首相は、「将来的に原発がなくてもやっていける社会をめざす」ということをいいました。しかしその直後に、国会の答弁で、これは「個人の見解」だといいました。これは、内閣として責任を持って取り組む立場にはないということを言明したものにほかなりません。ですから、私は、菅首相の発言を真面目なものだとは考えていません。ああいう記者会見を開いて、ああいう発言をしておいて、その直後に、「個人の発言」だということになると、これから菅首相が、いろいろな発言をしても、いちいち、「それは個人の発言ですか」と確かめないと前に進めないということになります。(笑い)

 このような無責任な発言は、私たちはまともに相手にすることはできません。やはり国民の世論とたたかいで、この問題を前に進めたいと思っています。

どのような「時間軸」で取り組むか、原発に代わるエネルギーは? 

 質問 原発に代わるエネルギー戦略をお持ちですか。どのような「時間軸」で進めるのでしょうか。火力に置き換えることもあるのですか。

 司会者 志位さんが答える前に、このテキスト(日本共産党の「原発撤退提言」)には、注目すべき数字があります。日本の再生可能エネルギーは、54基の原発発電量の40倍とのことです。

 志位 いま、司会者から答えの一部をしていただきました(笑い)。「エネルギー導入ポテンシャル」――現在の技術水準や社会的な制約なども考慮したうえで、実際のエネルギーとなりうる再生可能エネルギー・自然エネルギーの資源量は、現在の原発の総発電量の40倍にあたります。

 原発撤退の「時間軸」についての質問がありました。私たちは、5年から10年以内に「原発ゼロ」をめざすというプログラムを提案しています。私がさきほどのべた、原発がもつ危険性の巨大さからすれば、原発からの撤退は早ければ早いほどいいのです。ただ、もちろんエネルギー不足による社会的リスクや混乱は避けねばなりません。地球温暖化問題を考えるならば、安易な火力への置き換えというやり方をとるべきでもありません。

 そこで私たちは、5年から10年以内に、電力消費量を全体として10%程度削減する。そして、現在は総発電量の9%程度が自然エネルギーですが、それを2・5倍にする。このことによって原発による発電量をカバーしようというのが私たちの考えです。

 日本の自然エネルギーの資源量はきわめて豊かです。みなさんにお配りしたテキストにも20億キロワット以上という数字が「エネルギー導入ポテンシャル」として提示されています。これは環境省の数字です。自然エネルギーの普及に正面から挑戦し、この問題を突破していくというのが私たちの考えです。

日本共産党と「原子力村」との関係は?

 質問 連合は原発を支持してきましたが、労組も「原子力村」に含まれるとお考えでしょうか。貴党も「原子力村」に入ることを画策したことはありますか。(笑い)

 志位 それはありません(笑い)。日本共産党には買収はいっさい通用しません(笑い)。私たちは企業献金は1円も受け取っておりませんから。また、私たちの「しんぶん赤旗」には、大企業の広告は載せておりません。

 連合についていいますと、一つの問題点は、民主党との関係です。連合は民主党への一党支持ということを決めています。だから民主党が方針を決めるとそれに連動するという関係になります。去年、民主党政権が「エネルギー基本計画」で原発の大増設の方針を決めますと、それにあわせて連合も増設の方針を決めました。もう一つ、連合には、労資協調主義という弱点があります。一連の大企業では、しばしば、労組の委員長をやった人が、重役になったりします。こういう力も作用するのです。

「赤旗」のスクープは、どのように情報を得ているのか?

 質問 九州電力の「やらせメール」問題は、「赤旗」のスクープでした。どのように情報を得たのでしょうか。この記事はキャンペーンの第1撃で、第2撃、第3撃はあるのでしょうか?(笑い)

 志位 「しんぶん赤旗」のスクープについて評価をしていただいて、ありがとうございます。この経過をいいますと、私どもの福岡県委員会に、九州電力の関係会社の方から連絡がありました。私たちが九電に立ち入って調査したというよりも、私たちに情報が寄せられたのです。「しんぶん赤旗」はその情報を慎重にたしかめて、信ぴょう性に間違いがないとして報道に踏み切りました。「しんぶん赤旗」が報道した段階では九電は否定していました。そこで国会で、笠井亮衆院議員がこの問題を取り上げました。海江田万里経済産業相は「そんなことがあれば許されないことだ」と答弁しました。そういうやりとりを経て、その日の夜、急きょ九電は事実を認めることになりました。

 これが経過ですが、「しんぶん赤旗」のスクープというのは、多くの場合がそういう形で、情報提供者が私たちを信頼して寄せていただいた情報をもとに、スクープとなることが多いのです。「しんぶん赤旗」にもっていけば握りつぶしたりなどしないだろうと(笑い)、みんなが安心して託してくれます。そして私たちは情報提供者を絶対に守ります。この点でも信頼があります。今後も、同じような事態が起これば、私たちに情報を寄せてくれる動きも起こるでしょう。その時には、私たちは同じような行動を取ることになります。

原発撤退の国民的運動の展望は?

 質問 イタリアでは国民投票で原発ノーと決めました。日本の世論はどうでしょう。反原発のデモ参加者が少ないように感じますが?

 志位 たしかにまだ始まったばかりですけれども、大きな運動が、日本列島各地で起こりつつあります。7月2日には、「原発ゼロ」を掲げて2万人の大集会が初めてもたれ、原発撤退をめざす運動が本格的に始まりました。多くの著名な文化人・知識人の方々が、声をあげ始めています。

 私たちは、原発からの撤退の一点で、これまでの立場の違いを超えて協力したい、大きな国民的共同をつくりたいと願っています。ドイツ、スイス、イタリアという、世界の原発撤退の流れに、日本も合流していきたいと、決意しているところです。

司会者のあいさつ

 きょうは党の政策を説明してくださり、ありがとうございました。再生可能エネルギーの可能性は原発の40倍にあたるということが頭から離れません。志位さんには、原発撤退を実現させた後に再びここに来ていただき、どうやって、それを実現したかを報告してくださることをメンバー全員が期待しております。(拍手)





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