2011年7月22日(金)「しんぶん赤旗」
原発の危険性の情報提供を目的とし、専門家の英知結集した体制を
原発再稼働問題での「安全評価」の実施をめぐって
志位委員長発表の見解
日本共産党の志位和夫委員長が21日の記者会見で発表した「原発の危険性の情報提供を目的とし、専門家の英知結集した体制を――原発再稼働問題での『安全評価』の実施をめぐって」は次の通りです。
政府は、7月11日の「統一見解」にもとづき、定期検査中の原発の再稼働について、国民・住民の理解が得られているとは言い難いとして、「欧州諸国で導入されたストレステストを参考に、新たな手続き、ルールに基づく安全評価を実施する」としている。
しかし、この政府の方針には、重大な問題点がある。欧州諸国を参考にというならば、つぎの点が必要である。
(1)
第一は、この「安全評価」のテストを何のためにやるのか、その目的についてである。
政府の方針では、「定期検査で停止中の原発の運転再開の可否について判断する」(1次評価)、「運転中の原発について運転の継続または中止を判断する」(2次評価)ためとのべているように、政府が原発の稼働の是非を判断することが、このテストの目的とされている。これでは、原発の再稼働のための手続きにすぎず、「再稼働さきにありき」という批判が広くおこるのは当然である。
欧州諸国で行われているストレステスト(耐性試験)の目的は、その結果にもとづき各国政府が原発の「安全性」にお墨付きを与えるためではなく、原発の危険性についてのリスク情報を示すことによって、国民に判断を求めるためのものとされている。
日本でも、それを参考にするというならば、テストの実施は、政府が原発の稼働を国民に押し付ける手段にすべきではなく、国民が原発の稼働の是非を判断するために原発の危険性についての情報提供を行うことを目的とすべきである。
(2)
第二は、この「安全評価」のテストを行う実施主体の問題である。
政府の方針によれば、これを電力会社が実施し、その結果を原子力安全委員会と原子力安全・保安院が確認することになっている。しかし、「安全神話」をふりまいて、今回の事故を引き起こし、その収束もできない現在の保安院や原子力安全委員会が、原発再稼働にかかわる資格も能力もないことは、明らかである。
欧州諸国のストレステストは、原発事業者が検査を行い、原子力の推進機関から独立した各国の規制機関が妥当性を評価したうえで、さらに7人からなる各国専門家チーム(欧州委員会代表と6人の各国規制機関代表)が検討するというものとなっている。しかも、最終的な総括報告が、来年6月の閣僚理事会に提出されるまで1年がかりのとりくみとなっている。
今回の福島原発事故について、政府がIAEA(国際原子力機関)に提出した報告書(2011年6月)では、「安全規制行政体制の強化」を重要な教訓の一つにあげ、「原子力安全・保安院を経済産業省から独立させ、原子力安全委員会や各省も含めて原子力安全規制行政の見直しの検討に着手する」としている。
それが本気のものならば、テストの実施は、電力会社、保安院、原子力安全委員会ではなく、「安全神話」にとらわれない科学者、専門家、技術者の英知と力を総結集した体制をつくり、その体制によって担われるべきである。政府が行おうとしているテストが、こうした体制によって行われるならば、原子力の推進機関から独立した規制機関をつくる第一歩としても、重要な意義を持つことになる。
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