2011年7月22日(金)「しんぶん赤旗」
主張
米未臨界核実験
「核兵器のない世界」に反する
米国が昨年12月と今年2月の2回にわたって、未臨界核実験をネバダ核実験場で実施したことが明らかになりました。昨年9月と合わせ、オバマ政権下で3回です。
唯一の被爆国として核兵器廃絶の先頭に立つ日本の国民にとって、未臨界核実験の実施は容認できるものではありません。福山哲郎官房副長官はこの問題で、「(米国に)抗議や申し入れは考えていない」と述べ、米国への支持を表明しました。米国の「核抑止力」に依存し、核兵器を正当化する菅直人政権の姿勢は、厳しい批判をまぬがれません。
使える兵器として
未臨界核実験は、高性能爆薬を爆発させることによって、核兵器の弾頭を構成するプルトニウムなどの核物質がどう動作するかを調べるものです。核物質が飛び散るため地下約300メートルの実験室で行われ、実験後は閉鎖されます。
実施を公表した米エネルギー省の文書には、核爆発に匹敵する高温・高圧状態をつくりだす装置など、さまざまな実験が行われていることが示されています。
米国はこれらの実験を通じて、大陸間弾道弾(ICBM)ミニットマンIIIに搭載されるW78核弾頭や巡航ミサイル用のW80弾頭などを改修し、使用期限を延長しようとしています。製造後時間がたった核兵器に起きる物理変化を踏まえて、実際に使える性能を維持するものです。
福山副長官は「(実験は)貯蔵する核兵器の安全性と有効性を確保するため」と述べました。「有効性」とはその核兵器が多数の人々を確実に殺傷できることにほかならず、米国の発表をおうむ返しにした発言は無責任きわまりないものです。
米国は、未臨界核実験は核爆発には至らないとして、核実験ではないと言い張っています。しかし、核兵器の生産に必要な実験を行うことに変わりなく、米国の主張は通用しません。
オバマ政権は核拡散を防ぐために、核兵器開発に不可欠な核実験を全面禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効を求めています。一方で、高度な技術を駆使してCTBT発効後も必要な実験を行い、核兵器保有の優位性を確保しようというのでは、世界を納得させることはできません。
それはCTBTを骨抜きにし、核兵器の拡散に拍車をかける危険もはらんでいます。
オバマ大統領は2009年の演説で、「核兵器のない世界」をめざすとし、核兵器の廃絶を国家目標として掲げました。未臨界核実験は大統領の言明に反するものであり、ただちに中止すべきです。
廃絶交渉速やかに
人類は核兵器と共存することはけっしてできません。核抑止力論は、いざとなれば核兵器を使うぞと脅威を相手に与えることで、自らの意思を押し付けようとする議論です。核兵器廃絶への前進を阻んでいる核抑止力論を打破する必要があります。
核兵器の廃絶に向けて交渉を開始することは、世界政治の現実の課題となっています。昨年開かれた核不拡散条約(NPT)再検討会議は、「自国の核兵器の完全廃絶のための核兵器国の明確な約束」を国際公約として確認しました。核保有国はその責務を速やかに果たすべきです。