2011年7月21日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「鰻(うなぎ)食ふこのとき汗のよかりけり」(森澄雄)。日の照りつける道を汗だくで歩いていても、店先から漂ってくるかば焼きのにおいをかぐだけで気持ちが活気づいてきます▼きょうは、とりわけかば焼きのにおいに引かれる夏の土用丑(うし)の日。しかし、においだけでがまんの人が多いかもしれません。養殖池で育てる稚魚シラスが、2年続きの不漁。かば焼きもさぞ高かろう、と見込まれています▼江戸時代の学者・平賀源内が、なじみのうなぎ屋の宣伝で考え出したという、土用丑の日にウナギを食べるならわし。かば焼きは当時も、庶民には高根の花でした。代用品は、アナゴのかば焼きでした▼源内の宣伝があたったのだとしても、夏ばてを和らげるウナギ食の効用は、古代から伝えられています。たんぱく質はもちろん、ビタミンA、B、Eも多い。しかし、ウナギの生態は謎だらけでした▼ことし、大発見の発表がありました。東大と水産総合研究センターの研究班がニホンウナギの卵を世界で初めて採集した―。グアム島に近い、太平洋マリアナ海嶺でした。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、ウナギの卵は泥の中から自然に生まれると考えた、といいます▼ところで、ウナギが産卵する海は、台風も多く発生する場所です。大雨と強風で列島を襲い人命を奪った台風6号は、マリアナ諸島を通ってきました。台風は、地球の温暖化がすすむにつれて荒っぽさを増している、とみられます。「颱風(たいふう)のあとや日光正しくて」(山口誓子)