2011年7月20日(水)「しんぶん赤旗」
「災害支援」口実 自衛隊強化の動き
民間船舶を軍事利用
南西諸島の基地化
日米軍事一体化の危険も
「災害支援」の冠がつけば何でも許される? 東日本大震災での米軍・自衛隊の災害支援に対する一定の支持・共感を“追い風”として、有事を想定した日米同盟・自衛隊の強化を図る動きが目立っています。
徴用犠牲の過去
「最大の危機を想定して、常に装備を持つのは現実的ではないので、民間船のチャーターを研究したい」
17日、青森県むつ市を訪れた北沢俊美防衛相は、被災地に向かう陸上自衛隊が米艦船に搭乗し、北海道帯広市から青森県むつ市・大湊港に移動した事例について記者団から問われ、こう答えました。
過去には、太平洋戦争で1万隻を超える民間船舶が徴用され、6万2千人が犠牲になりました。朝鮮戦争でも民間船舶が米軍輸送に動員されています。
このため、有事法制で旅客船業者が戦時動員の対象になる「指定公共機関」とされた2004年、海運関係者から強い反対の声が上がりました。
北沢防衛相は、「輸送能力の強化は(現行防衛大綱の)動的防衛力の根幹に関わる」と述べています。災害支援を入り口として、民間船舶の戦時利用につなげる狙いです。
馬毛島「基地化」
馬毛島(鹿児島県西之表市)の米軍・自衛隊基地化計画の説明は、さらに露骨です。
防衛省資料の「大規模災害時における展開・活動」というチャート図では、全国の自衛隊部隊が集結・展開拠点に集まり、「被災地への展開・活動」を行うとしています。その「拠点」が、馬毛島なのです。
また、沖縄本島沖の下地島(宮古島市)でも、国際的な「災害支援拠点」とし、同島の軍事利用の突破口を開こうとしています。
馬毛島については、米空母艦載機の離着陸訓練場にするのが真の狙いです。自衛隊は主に米軍支援のため配備されるにすぎません。
自衛隊の部隊配置は中期防衛力整備計画(中期防)に盛り込んで予算化しますが、昨年、決定された中期防は馬毛島への自衛隊配備に全く触れていません。「災害支援」を口実に、みずからが定めた手順まで踏み外そうとしているのです。
戦時適用の狙い
震災支援を口実とした軍事的強化で、とりわけ重大なのが日米司令部の一体化です。
米軍は「トモダチ作戦」の統合支援部隊をつくり、自衛隊も「災統合任務部隊」をつくりました。両者の作戦調整は、防衛省が所在する市ケ谷(東京都新宿区)、米軍横田基地(東京都福生市など)、仙台の3カ所に設置された四つの「日米調整所」で行われました。
6月21日に発表された日米安保協議委員会(2プラス2)共同文書では、「(日米調整所での)経験は、将来のあらゆる事態への対応のモデルとなる」と述べ、戦時に適用する狙いを露骨に示しています。
現時点において大規模災害に対応できる十分な装備を持っているのは自衛隊しかなく、その活用はやむをえないことです。
また、米軍の支援は、世界161カ国からの震災支援の一つとして謝意を示すことは当然ですが、この「感謝」は、あくまで災害支援に対するものです。それを日米同盟強化につなげるのは許されません。(竹下岳)
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