2011年7月20日(水)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
東日本大震災と原発災害の取材の第一線に立つ、本紙の若い記者たちが口をそろえます。当初、ためらい戸惑い悩みながらメモ帳を開き、カメラを構えた、と▼被災者に、どんな声をかけたらいいのか。しかし、写真家の森住卓さんが証言します。「(被災地は)世界の戦場で砲弾が飛び交う中を歩いてきた強者(つわもの)にさえ、その破壊のすさまじさに立ちすくみ息をのんだと、一様に言わせる風景だった」▼フリーの写真家や映像作家が集う日本ビジュアル・ジャーナリスト協会の写真集『3・11メルトダウン』に載る、森住さんの言葉です。大津波の被災地、福島第1原発の周辺、原発災害で村ぐるみ避難の飯舘村を撮った写真集です▼一枚一枚に、おしなべて厳粛な雰囲気がただよいます。目をそらしたくなる現場写真からも伝わる、撮る側の鎮魂の念と死者に語らせたい気持ち。人々の表情や全身が発する、不条理な現実への静かな怒り、それでも生きようとする生命力▼がれきの中にみつけた銘酒で乾杯する酒蔵の人たちと海女さんの笑顔(野田雅也さん撮影)から、声が飛んできそうです。「さあ、ここから出発だぞ」…。『3・11メルトダウン』の題名について、山本宗補さんが解説します。福島第1原発だけではなく「政府もマスコミもメルトダウン(炉心溶融)したのである」▼新聞・テレビの原発報道をみれば、うなずけます。人々と苦難をともにしてきたと自負し、原発の危険を警告し続ける本紙の立ち位置を、改めて確かめました。