2011年7月18日(月)「しんぶん赤旗」
震災被害者
医療費の窓口負担免除
口頭申請から証明書必要
東日本大震災の被災者が医療費の窓口負担の免除を受ける特例措置が来年の2月末まで延期されました。これまでは口頭の申告で免除されましたが、1日からは健康保険証のほか保険者が交付する「免除証明書」を医療機関の窓口で提示することが求められることになりました。そのため、宮城県の被災地では、住民が免除証明書の申請に自治体の窓口を次々と訪れています。(西口友紀恵)
保団連 “交付 行政の責任で”
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大震災で4千人を超える死者・行方不明者が出た石巻市。市役所の窓口で国民健康保険と後期高齢者医療制度の加入者からの申請を受け付けています。国保の加入者は6月末で約5万5千人。ホームページや各戸に配布する市報、避難所で配るチラシなどで申請手続きなどを広報し、「住家の全半壊、全半焼など」七つの免除基準の対象になる約2万人(6月末、国保分)に免除証明書を交付しました。多い日は1日で1400人を超え、担当課だけでは手が足りず臨時職員も入れたといいます。
7月に入って少し落ち着き、1日100〜300人に。中旬に申請にきた83歳の女性は「市内で一人暮らしでしたが、2階近くまで水が入って全部ダメになりました。塩釜市の息子の所に身を寄せています。足がないので孫の休日に車に乗せてきてもらったけど1時間以上かかった。免除証明書のことは病院で聞いて知ったので窓口負担分は払った」と話します。
「いろいろな手続きのたびに、松島町の避難先からバスに1時間15分乗り、片道400円かけてくるのは大変」と困惑した様子の老夫婦もいました。
この間、自治体では短期間での膨大な事務量に忙殺されました。
東松島市では、5月31日時点の国保加入者で住宅が半壊以上の5000を超える世帯に免除証明書を郵送。6月21日からは申請した人への交付を始めました。
国の免除基準で現場に混乱招く
「厚生労働省の通知が遅く、住民に知らせて手元に届けるまで1カ月半しかなく大変だった」と担当者。当初、厚生労働省が示した基準の内容や範囲に不明確な点が少なくなかったことも現場の混乱を招いた、と各市の担当者たちは話します。
免除基準の一つ、「主たる生計維持者が失職し、現在収入がない人」では、当初「収入」に何が含まれるかなどが不明でした。「被災し失業者が多いことはわかっていたことだったので、初めから統一した基準を示してほしかった」(気仙沼市)などの声が出ています。問い合わせが殺到し、同省が詳細な質疑応答集を出したのは6月末になってからでした。
いま問題になっているのは、雇用保険の失業給付を受けている間は、元の給与の6、7割しかもらえていないにもかかわらず「収入」とみなされ、免除の対象にならないことです。これについて同省は「収入金額や扶養家族の人数等を勘案し、十分な収入がないと保険者が判断する場合は、当該基準に準ずるものとして柔軟に対応しても差し支えない」と、保険者任せにしました。この点にも、現場からは「ある程度の目安を示してもらわなければ困る」と批判が出ています。
生保基準以下で気仙沼市は免除
気仙沼市では、この基準について、失業給付を受けていてもその他の収入と合わせて生活保護基準以下なら免除の対象とすることを決め、8月1日付の広報で知らせるとしています。「お金がなくて受診を控え重症化するなど命にかかわるような事態は避けたい」と担当者は話します。
開業医などでつくる全国保険医団体連合会は7日、首相と厚労相に対して、免除証明書の交付について、すべての対象者に周知を徹底するとともに、患者の申請待ちではなく行政の責任で交付することなどを要請しています。