2011年7月18日(月)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「下北半島の長く伸びた東通村の植生、…それらにかようものがここにはある。そしてそこに生きる人にも」。福島県南相馬市に暮らす詩人・若松丈太郎さんが近著『福島原発難民』で記した一文です▼福島県浜通りと、青森県の東側に突き出た下北半島東部。太平洋の荒波にさらされる両地域の経済は、国から押し付けられてきた「迷惑施設」との共存を強いられてきました▼10基の原子炉を抱える福島県浜通り。そして、2005年に営業運転を開始した東通原発や六ケ所村核燃サイクル施設などを抱える下北半島。ここには、原発に加えて米軍・自衛隊の基地が集中しています▼これらの施設を受け入れると、巨額の「アメ」が自治体にもたらされます。交付金を受け取った自治体は、短期的には豊かになります。土地を売った農家が億万長者になり、目新しい「ハコ物」が次々に立ち並ぶ…。しかし、どこでも共通するのは「ハコ物」の維持費がかさみ、逆に財政が悪化するという悪循環です▼財政悪化だけなら、まだいい。浜通りでは、福島第1原発の事故で自治体そのものがなくなる危機に直面しています。先祖伝来の田畑は放射能に汚染され、人の背丈ほどの雑草に覆われています▼最近、東通原発の周辺を訪れました。同原発から1キロほどの場所に、多くの住民が暮らしていました。それは、原発と“共存”してきた福島第1原発周辺の、昨日までの姿です。下北の明日の姿が、福島のようであってはならないと強く感じます。