2011年7月16日(土)「しんぶん赤旗」

主張

南西地域の軍事化

近隣諸国との緊張強めるだけ


 九州の南方から沖縄本島西方の南西諸島までの南西地域にある島々を軍事化する動きに、関係自治体・住民が反発し反対の声をあげています。

 防衛省は12日、台湾に近い与那国町で陸上自衛隊の与那国島配備の住民説明会を開きました。石垣島への陸自部隊の配備や下地島(宮古市)の軍事利用も企てています。鹿児島県種子島から12キロしか離れていない馬毛島を日米共同使用の基地にする動きも急速です。沖縄本島に加え南西地域全体の軍事態勢を強めるのでは、アジア近隣諸国との間に緊張を高めることになるのは避けられません。

住民の過酷な苦しみ

 南西地域の軍事化は昨年12月政府が決定した「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」にもりこまれた方針です。6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2=外交軍事閣僚協議)でも確認されたように、それは米国の要求そのものです。防衛省が動きを加速しているのは、米国の軍事要求に応えることで政権の延命につなげようとする菅直人首相の考えによるものだとみられても仕方がありません。党利党略で住民を犠牲にするのは言語道断です。

 与那国町での住民説明会では、外間守吉町長が賛意を示したものの、「有事の際は住民が戦闘に巻き込まれる」「誘致によって島が分断される」などの反対意見が相次ぎました。軍事利用しないとの政府の約束をほごにし下地島空港を軍事基地にする動きもきびしい批判にさらされています。

 沖縄県民は太平洋戦争末期の沖縄戦で甚大な被害をこうむり、自衛隊の前身の日本軍からも残虐な仕打ちを受けました。沖縄と奄美は戦後、米軍の占領下におかれました。二度と悲惨な経験を繰り返したくない、平和に暮らしたいという思いから、住民が軍事化に反対するのは当然です。

 馬毛島の基地化は米空母艦載機の昼夜を問わない離着陸訓練による爆音で種子島の3万2千人もの住民を苦しめることになります。神奈川県厚木基地での夜間離着陸訓練での爆音は十数キロ離れた東京都町田市や神奈川県藤沢市でも「うるささ指数」が「受忍限度を超える」75と測定されています。馬毛島から12キロしか離れていない種子島の住民が爆音被害で苦しめられない保証はありません。

 しかも「2プラス2」の合意文書は馬毛島を、大規模災害対処を看板にしながら「各種事態」に備えた「支援」基地とするとものべています。上陸訓練なども行います。まさに戦争に備えた基地です。西之表市など1市3町の自治体・住民が一体となり反対運動を強めているのは当たり前です。

軍事対応やめてこそ

 見過ごせないのは、南西地域の軍事化が米政府のアジアと世界の「共通戦略目標」にそった軍事態勢づくりの一環だということです。北沢俊美防衛相は「アジア周辺の安全保障環境に対応」するためとのべています(2月25日)。南西地域の軍事化が、この地域の軍事的な緊張を激化することは明らかです。軍事的な対応を強めながらアジア諸国との間で平和・友好関係を作れるはずはありません。

 南西地域の軍事化は日本のアジア外交にとっても有害です。軍事一本やりの方針は根本から正される必要があります。





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