2011年7月14日(木)「しんぶん赤旗」
都の土地信託事業失敗
借金30億円余残し終了へ
両国シティコア
東京都が都有地の運用を信託銀行に委ねる土地信託事業のひとつ、「両国シティコア」(墨田区)が失敗し、30億円の借入金を残したまま2012年7月に契約が終了することが13日までに、本紙の取材で明らかになりました。
両国シティコアは、日大講堂跡地に業務・商業・スポーツ施設、都民住宅を併設した複合ビルで、1992年に完成。都は住友、みずほ、三菱UFJの3信託銀行に事業を委ね、20年間(93年度〜2012年度)に地代の代わりに83億円の信託配当を受け取る計画でした。しかし、11年度までの19年間の配当実績は約13分の1の6億円余にとどまっています。
両国シティコアの事業報告によると、借入金残高は40億3601万円(今年3月末)にのぼり、11年度の返済予定額は10億1992万円のため、契約終了時に30億円余の借金が残る見通しです。
都財務局は「計画をつくった時は、バブル崩壊を予想できなかった。信託期間が終われば土地・建物とともに負債も都に返還されるので、税金を投入しないですむような対策を検討している」と説明しています。
井上徹二氏(公認会計士)の話 両国シティコアの土地信託事業は大失敗だ。土地を提供した都の信託配当は6億円しかないのに、信託銀行は利息収入と信託報酬で59億円の収入を得ている。銀行にうまく乗せられた東京都の責任は大きい。
土地信託事業 土地の所有者が信託銀行に土地を預け、建物の建設と資金調達、賃貸、管理を任せ、地代の代わりに収益の一部を信託配当として受け取る制度。86年の地方自治法「改正」で国や地方自治体への適用が認められ、都は「民間活力」導入策として5件の土地信託を実施しています。
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