2011年7月13日(水)「しんぶん赤旗」

児童福祉施設の最低基準改正

“抜け穴”あり、予算措置次第も


 児童福祉施設の最低基準がこのほど改正されました。職員配置基準、居室面積や居室定員の一部が引き上げられましたが、抜本的な改正には程遠い内容となっています。

 今回の最低基準の改正は、1月から行われてきた厚生労働省の検討会を受けたものです。

現状の後追い

 改正によって、これまで最低基準に書かれていなかった乳児院の看護師数などが明記されました(表)。10人以上20人以下の乳児院や45人以下の児童養護施設には保育士を加配することも明記されました。

 しかし、これらの職員配置基準は、すでにこれまでその水準で予算がつけられてきたもので、現状を後追いする形で最低基準に書き込まれたものです。

 また、居室面積は、乳児院が1人あたり1・65平方メートルから2・47平方メートル以上に引き上げられるなど改善されました。(表)

 児童福祉施設の居室定員は、1室15人以下だったのが4人以下(乳幼児のみは6人以下)になりました。

 乳児院、児童養護施設などには、家庭支援専門相談員の配置が義務化され、それにともなって相談室の設置も義務化されました。

 しかし、こうした居室面積、居室定員、相談室の必置の基準引き上げには“抜け穴”があります。新基準の適用は、新基準適用(6月17日)後に「新設、増築または全面改築」される施設に限られるからです。新基準適用前に施設を新築したばかりの施設なら、今後何十年も改善されなくても問題ないことになります。

地方条例任せ

 さらに、児童福祉施設などの最低基準は、「地域主権改革」一括法(4月28日成立)によって撤廃され、2012年4月1日から地方の条例任せにされます。

 職員配置や面積基準などについては、現行の最低基準に準じて国が示すガイドラインに地方は「従うべき」とされました。一方で居室定員は、地方独自に定められることになっており、改善が進まなかったり、地方による格差が広がる怖れがあります。基準向上の義務も、厚労相から都道府県に丸投げされます。

 「タイガーマスク現象」で関心が集まった児童養護施設の職員配置基準は、現行の子ども6人に職員1人(小学生以上)を4人に1人にするなどの「目標水準」が示されました。しかし、その実現は予算確保次第とされています。現行水準は1979年から据え置かれたままで、世論を受け細川律夫厚労相は改善を「検討する」としていました。来年度予算の概算要求に盛り込むことが必要です。

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