2011年7月13日(水)「しんぶん赤旗」

主張

空洞化の脅し

どこまでわがまま通すのか


 経団連の米倉弘昌会長が11日の記者会見で机をたたいて怒りをあらわにしました。「ストレステスト(耐性試験)」の実施などで定期点検中の原発の再稼働の時期が遅れることに、いら立ちを抑え切れなかった様子です。

 米倉氏は「電力の安定供給」がなければ「日本企業は海外移転してしまう」とのべました。さっさと原発を再稼働しないなら大企業は日本から出て行って、日本を空洞化させるぞという脅しです。

異常な原発擁護の姿勢

 被害を拡大している東京電力の福島原発事故は国民の意識に大きな変化をもたらしています。原発は「廃炉」へと答えた人が82%(「東京」6月19日付)、段階的に削減し将来は「やめる」という人が77%(「朝日」12日付)―。圧倒的多数の人が原発ゼロの社会を求めるようになっています。

 無責任な原発「安全宣言」で再稼働を急ぐ政府のやり方には国民の怒りが広がっています。信頼を完全に失った電力会社と原子力安全・保安院、原子力安全委員会に任せるストレステストに一片の信頼性もないことも明らかです。

 原発とは共存できないという思いからの国民の怒りとは正反対に経団連会長は原発をすぐ再稼働しないことに怒っています。放射能による被害は日本列島の各地に拡散し、危険は何十年先まで及び、地域社会が文字通り崩壊の悲劇に見舞われているというのに―。かつてない国民の不安、とりわけ暮らしを根底から覆された福島の住民の無念と痛恨の思いに何の痛みも感じないのでしょうか。

 米倉氏は東電の原発事故を見て「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしい。もっと胸を張るべきだ」と言い放ちました。賠償でも「東電の免責は当然」、東海地震の震源地に建つ浜岡原発の停止要請にも「唐突だ」と、なりふり構わず原子力発電と電力会社を擁護し続けています。他方で再生可能エネルギーを増やすことについては「電力価格の上昇をもたらす」と敵視する姿勢です。

 背景には電力会社が財界中枢に座り、日本への原発導入の当初から財界が後押しし、政治献金をテコに歴代政権に原発推進を迫ってきた、財界と原発との深いかかわりがあります。それでもなお、悲惨極まりない3月11日の事故を経験した後では、利益を最優先にしたこれまでの原発推進の姿勢を少しは反省してもよさそうなものです。しかし、米倉氏の発言や態度からは、そんな反省のかけらも見えません。

 反省どころか、日本から出て行くぞと政府や国民を脅すに至っては、情けなささえ感じます。

いまそこにあるリスク

 東電の事故は本質的に危険な原発こそ電力の安定供給の最大の障害であることを示しました。その原発から速やかに撤退し、再生可能エネルギーを最大のスピードで本格導入していくことは大企業の経営にもプラスのはずです。大企業が原発の近くから工場を撤退しようとしているように、原発の存在はいまそこにある経営のリスク(危険)にほかなりません。

 大企業の中にも浜岡原発の停止要請を歓迎したり、再生可能エネルギーの推進を主張したり、安易な海外移転はしないと表明している経営者もあります。それと比べても経団連会長の姿勢は異常さが際立つばかりです。





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