2011年7月12日(火)「しんぶん赤旗」

耐性試験の政府統一見解

会社が“お手盛り”評価 停止原発の再稼働優先


 政府が11日に発表した原発の「ストレステスト(耐性試験)」に関する統一見解。これは、菅直人首相が6日、玄海原発(佐賀県)など停止中の再稼働を推進してきた政府方針を「変更」し、国内の全原発を対象にした「安全性」の総合的評価を行い、これを再稼働の前提とすると表明したことに基づくもので、その具体的中身が問われていました。

 しかし、発表された統一見解は、「安全性」の評価を電力会社自身が行うという、明らかな“お手盛り”方式となっていることに加え、全原発の総合的な「安全性」試験とは切り離し、“簡易検査”をおこなえば停止中原発の再稼働が可能となる重大な中身となりました。

形だけのテスト

 統一見解は、原発の「現状認識」として、稼働中、定期検査中のいずれの原発についても、「従来以上に慎重に安全性の確認が行われている」と断言。再稼働にあたっての「問題点」として、「理解を示す声もある一方で、疑問を呈する声も多く、国民・住民の方々に十分な理解が得られているとは言い難い」などと指摘し、その「解決方向」として、「新たな手続き、ルールに基づく安全評価を実施する」としています。

 これらが意味するのは、“現在でも原発の安全性は確かだが、国民が不安がるから形だけのテストをして安心してもらう”という程度のものです。だからこそ、事業者が「評価」し、原子力安全・保安院と原子力安全委員会が「確認」するなどとしているのです。

やらせの会社が

 九州電力のように、原発維持のためなら組織ぐるみで「やらせメール」を行うような電力会社が評価し、福島第1原発事故に責任があるのに事故の収束でもなんら役割を果たせていない二つの機関が“お墨付き”を与えるというようなやり方は、およそまともなものとはいえません。

 さらに統一見解では、ストレステストに該当する、全原発の総合的な「安全性」試験(二次評価)とは別に、停止中原発については「安全上重要な施設・機器等が設計上の想定を超える事象に対しどの程度の安全裕度を有するかの評価」(一次評価)を行えば再稼働が可能となる仕組みとなっています。

 この一次評価について原子力安全・保安院の森山善範原子力災害対策監は11日の会見で、「再稼働を理解してもらうため」と明言しました。まさに、“再稼働先にありき”の中身といわなければなりません。

専門家総結集を

 国民の7割、8割が原発の「縮小・廃止」を求める中、このようなやり方が理解を得られるわけがありません。「やらせメール」に対する国民的な怒りや、玄海原発再稼働をめぐる県民説明会(8日)でわき上がった「福島第1原発事故が収束しないのに、なぜ再稼働を急ぐのか」「私たちの命とお金とどちらが大事なのか」などの声からも明らかです。

 政府は、ストレステストをやるというなら「安全委員会や保安院まかせにせず、政府が直接責任をもって、『安全神話』にとらわれていない専門家の英知と力を総結集して行うべき」(日本共産党の志位和夫委員長)です。(小泉大介)





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