2011年7月8日(金)「しんぶん赤旗」
原発停止なら電気代値上げ?!
天下り法人が「お手盛り試算」
「全原発を停止したら、電気代は月1000円値上がりする」―。東電福島第1原発事故後に、こんな国民を脅すような試算を発表した財団法人が、原発推進の経済産業省ОBの天下り先で、電力会社役員も関与する団体だったことがわかりました。
この財団法人は、「日本エネルギー経済研究所」(IEEJ)。「原子力発電の再稼働の有無に関する2012年度までの電力需給分析」と題する論文を発表しています。
このなかで、現在停止中、および定期検査入りする原発の再稼働がない場合、すなわちすべての原発が停止して火力発電で電力需要を代替する場合、燃料コスト増により、標準的な家庭の電力料金が、12年度は10年度実績に比べ、1カ月あたり1049円(18・2%)増加すると試算しています。
論文は、産業用電力料金も上昇し、「わが国の製造業をはじめとする産業の国際競争力に対しても深刻な負の影響を及ぼすことが懸念される」として、「安全性の確保を最重点課題とした上で、原子力発電の再稼働問題を真摯(しんし)に検討することが喫緊の課題となる」と結論づけています。
要するに、“原発を止めたら家計負担が増大するから、原発の再稼働を急げ”と、国民を恫喝(どうかつ)しているわけです。
問題は、IEEJが経産省所管の数ある原発推進団体の一つだということです。
1966年6月に設立され、同年9月に財団法人として通産省(当時)に認可されたIEEJは、「エネルギー諸般の問題を客観的に分析することにより、政策立案の基礎データ、情報、レポート等を提供」することなどを目的としています。
4月1日現在、24人の理事のうち、豊田正和理事長(元経済産業審議官)、4人の常務理事中3人など計7人が経産省ОB。外務省なども含めると、じつに9人が天下りとなります。(表参照)
東京電力の藤原万喜夫副社長、関西電力の濱田康男副社長、中部電力の勝野哲取締役専務執行委員、電気事業連合会の久米雄二専務理事らも理事に名前を連ねています。
IEEJの09年度決算をみると、経産省から約1億1500万円の補助金(国際エネルギー使用合理化等対策事業)が交付されています。「役員報酬規程」によると、常勤役員の報酬月額は、理事長140〜160万円、常務理事90〜120万円で、特別手当は報酬月額の5カ月分(上限)。
原発の推進官庁からカネをもらい、天下り官僚と電力会社幹部が多数を占める財団法人の政策提言が、「原発推進」となるのは当然といえば当然です。
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