2011年7月8日(金)「しんぶん赤旗」
「赤旗」と笠井質問 九電に“やらせ”謝らせた
玄海原発再開 とんでもない
九州電力の“やらせ”メール問題を明らかにした「しんぶん赤旗」のスクープと日本共産党の笠井亮衆院議員の国会質問が、九電玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開にストップをかけ、地元周辺では九電に怒りが大きく広がっています。
地元 怒りの声
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玄海原発の地元玄海町では、岸本英雄町長が国と九電への不信を理由に7日、再開同意を撤回しました。
玄海町役場近くのスーパーマーケットに買い物に来ていた同町の男性(80)は、「説明会への“やらせ”メールは県民をだまして恥じない九電の体質が現れたものだよ。今こそ、原発行政を根本から見直すべきだ」と語気を強めました。
玄海原発対策住民会議副会長の仲秋喜道さんは「国の『安全対策』なるものが、いかにいいかげんだったか明らかにしたものです」と述べるとともに、「九電のやらせメールを追及した『しんぶん赤旗』の報道と笠井議員の質問が決定打となって、町長を同意撤回へと追い込んだのです」と指摘。「町長の再開同意がまさに茶番だったことが明白になりました。町長は、町民の命を守る責任者として再開問題に取り組んでほしい」と話します。
労働組合などでつくる「くらしを守る佐賀県共同行動実行委員会」の久保田猛代表は、「福島原発事故の収束の見通しもないなか、運転再開などとんでもない。宣伝・署名運動を強め、老朽化した1号機の廃炉、2、3号機の再稼働断念、危険なプルサーマル発電の中止を求める世論を広げていきたい」と語ります。
世論誘導 許されない
共産党長崎県委が宣伝行動
日本共産党長崎県委員会は7日、長崎市内3カ所で九州電力玄海原発の運転再開に反対する宣伝を行いました。
山下満昭党県委員長は、九電が玄海原発の運転再開を狙って佐賀県での国説明会の場に県民を装った賛同メールを送るよう指示していた問題について、「世論を誘導しようとした行為であり許されない」と抗議。停止中の原発の運転再開反対を市民に訴えました。
演説を聞いた女性は「国民をだます、やらせメールは絶対にダメです。もし、報道されなかったら、私たちは不正が行われていたこと自体、知りようがなかったでしょう」とのべました。
原発に不安抱く国民を愚ろう
九電不正工作の経過
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「投稿をお願いしたのは間違いない」―。九州電力玄海原発の運転再開に向けた「説明番組」での“やらせメール”問題。原発の安全に関する国主催の説明会で電力会社が不正工作を行うという、絶対に看過できない事態です。
内部資料を入手
経済産業省主催による説明番組「しっかり聞きたい、玄海原発」は6月26日に地元ケーブルテレビやインターネットで生中継されました。
その直前に本紙は、「九州電力が、関連会社に玄海原発運転再開に賛成する投稿を組織するよう依頼している」との証言と、それを裏付ける関連会社の内部資料を得ました。
「九州電力からの要請」と明記された資料では、玄海原発運転再開に賛成するメールを番組に投稿するよう指示。発信は自宅からするなど、細かい方法も書かれていました。
本紙は、綿密な取材を重ねたうえで同月30日、九電広報担当者にただしました。これにたいし九電側は「(関連会社への依頼は)一切しておりません」と回答。九電は一般紙の取材にも同様の返答をしていました。しかし、事実関係に確信を持っていた本紙は、7月2日付1面トップで大きく報じました。
さらに6日の国会で日本共産党の笠井亮衆院議員が追及し、同日夜に社長が記者会見を開いて認めざるを得なくなったのです。
平然とウソ回答
九電が明らかにした「協力会社本店 各位」あてのメールは、“やらせ”の方法を詳細に説明しています。たとえば、「発電再開容認の一国民の立場から、真摯(しんし)に、かつ県民の共感を得うるような意見や質問を発信」しろなどと指示しているのです。
真部社長によると、投稿の指示は、本店課長級社員から主要関連会社4社の担当者にメールで行ったといいます。社長は、自らの関与を否定しましたが、組織的で悪質なやり方は、福島原発事故で原発の安全性に不安を募らせる国民をさらに裏切り愚弄(ぐろう)するものです。
九電の川内原発を抱える鹿児島県でも4日、県議会で日本共産党のまつざき真琴県議がこの問題を追及。九電幹部は、意図的な指示はしていないと平然と答えました。
本紙は“やらせ”を否定した九電広報担当者に社長会見後の7日、改めて事実関係をただしました。担当者は「社内で相談した上で回答したい」としたうえで、数時間後に「間違いだった」と訂正してきました。
原発の安全性という、電力会社に問われる最大の責任問題で国民を欺いた九電。地元や国会で誠実に真相を説明することが求められます。(原発問題取材班)
地域住民を軽視 許しがたい対応
まつざき真琴・党鹿児島県議 全国の原子力発電所の再稼働をめぐっては、佐賀県の玄海原発2、3号機の運転再開を突破口にしようとする動きがあります。
今回のやらせメールは、県民の原発への不安な思いを裏切る行為で許しがたいものです。
国会の質問で取り上げられ、国から調査を指示されると、あっさり認めるのに、鹿児島県議会での追及には、平然とウソの答えをする。地方議会なら隠し通せるとでも思ったのか、地域住民を軽視した対応も許しがたいと思います。
「頑張って追及して」 スタジオから激励も
テレ朝番組 笠井議員が電話生出演
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7日朝から新聞、テレビの話題をさらった九州電力による「やらせメール」事件。前日の国会で追及した日本共産党の笠井亮衆院議員がテレビ朝日系番組「ワイドスクランブル」に電話で緊急出演(7日午前11時半すぎ)しました。
事件の舞台になった玄海原発(佐賀県)運転再開のための政府主催・県民説明会。番組は、事件の顛末(てんまつ)や笠井議員の追及内容を1面トップなどで大きく報じた7日付全国紙やスポーツ紙を紹介。笠井議員の質問場面の映像が流れました。
最初は否定
「九電側が関連会社も使って、一般国民を装って運転再開容認の流れをつくるメールを送れということを組織していた。こんなことはあるか。説明会をやったって正当性が疑われる。こういう思いで取り上げました」。経過を語った笠井氏。
スタジオから「国民の安全を左右すること、こんなことで決められてたまるものですかね」と共感の声。
笠井氏も「とんでもない話ですよね。正々堂々と材料を出して議論しあうことが必要ですし、説明に納得しなければ徹底して聞かなきゃいけないわけですから」と応じます。
九電社長の責任を聞かれた笠井氏は、7月2日付「しんぶん赤旗」が「やらせメール」のスクープ記事を掲載し、その際、九電側は「一切していない」と全面否定したことを紹介しました。九電社長が記者会見(7日)で「とうとう認めたかという思いだ」と語りました。
さらに笠井氏は、「こうやって安全神話が意図的につくられてきたのかと、その一断面を見た思いがする」「“危なくても、とにかく動かしたい”“国民の安全よりも利益のほうが先”を見た思い」と重ねて批判しました。
国の関与は
だれが“やらせメール”を指示したのか。笠井氏は「国はかかわっていないのか。事前に打ち合わせがあったはずで、そのとき九電ではいまのところ課長クラスという話があります」「経産省あるいは資源エネルギー庁や(原子力安全・)保安院がかかわって、打ち合わせのなかで、こう進めますよ、みたいなことがあったとすれば重大です」と述べ、国の関与も含めて全容を徹底的に解明すべきだと訴えました。
番組コメンテーターの川村晃司氏は、「社長が指示していない、知らなかったというのであれば、統治能力の問題が問われるし、一方でこういう情報操作やねつ造を社員がしていた体質は決して許されることではない」と問題の重大性を指摘。今後の展開に期待してスタジオから笠井氏に「頑張って追及していただきたい」との声が上がりました。