2011年7月8日(金)「しんぶん赤旗」
主張
原発新テスト
再稼働要請撤回し撤退決断を
東京電力福島第1原発の事故後の「緊急対策」などを理由に全国の原発の「安全」を宣言し、九州電力の玄海2、3号機など定期点検を終えた原発の再稼働を要請していた政府が、改めて「ストレステスト」(耐性試験)をおこない、運転再開に向けた新たなルールを作成すると言い出しています。
政府が新テストを言い出したのは、これまでの「安全」宣言の破たんを認めたものです。新テストや新基準の作成は運転再開を前提にせず、なにより各自治体への再稼働の要請を撤回すべきです。同時に、原発からの撤退への決断にこそ踏み出していくべきです。
「安全」宣言の破たん
東電福島原発の事故後、政府は各電力会社に「緊急安全対策」と「シビアアクシデント(過酷事故)対策」を求め、それが実行されたからと海江田万里経済産業相は「安全」を宣言し、6月18日には定期点検を終えた原発などが立地する自治体に、再稼働を要請しました。菅直人首相もその直後、海江田氏と「まったく同じ考え」だと表明していました。
東電福島原発の事故はいまだ収束のめどさえたたず、事故原因さえ明らかになっていません。にもかかわらず、「緊急対策」などが実行されたから「安全」だと宣言するのは、まったく無謀のきわみです。「緊急対策」などというのは、非常用電源車を配置したり、建屋が水素爆発しないようドリルを配備したりしたなどというものです。政府が国際原子力機関(IAEA)への報告書であげていた、28項目の「教訓」に照らしてもまったく不十分です。これで全国の原発が「安全」だなどというのは、原発「安全神話」の焼き直しにしかなりません。
実際、海江田氏が直接再稼働への協力を要請した九電玄海原発の周辺自治体をはじめ、全国で運転再開への反対が巻き起こっています。菅首相が急きょ5日に海江田氏や細野豪志原発担当相と協議して、ストレステストの実施など運転再開への新たなルール作成を言い出したのは、そうした反発が無視できなかったためです。
菅首相は、日本共産党の笠井亮衆院議員の予算委員会での質問(6日)に、再稼働は新ルールでチェックすると答えましたが、それなら再稼働要請は撤回すべきだという追及には明言しませんでした。海江田氏は、新テストは再稼働の前提にならないとまで示唆しています。新テストや新ルールの作成には着手するがいったんおこなった再稼働要請も撤回しないというのは地元自治体を混乱させるだけであり、再稼働要請をまず白紙撤回することが大前提です。
「安全神話」を断ち切って
原発が地震や津波などの重大事態にどれほどのゆとりで対応できるかチェックするストレステストは欧州連合(EU)が開始していますが、日本の場合、どんな内容で検査するかも決まっていません。いずれにせよ、原発の運転継続を前提に、これまでの原子力安全委員会や安全・保安院が中心になっておこなわれるなら原発の安全性は保証できません。本気でやるなら「安全神話」にとらわれない体制を作ってやるべきです。
運転再開を前提にするのではなく、原発からの撤退にむけ、地元の同意がない限り再稼働は認めないことを、まず明確にすべきです。
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