2011年7月7日(木)「しんぶん赤旗」
中国首相が歴訪
ハンガリー 英国 ドイツ
【北京=小寺松雄】中国の温家宝首相は6月末、今年上半期の欧州連合(EU)議長国ハンガリーと、英国、ドイツの3カ国を訪問し、欧州を重視する姿勢をアピールしました。今年1月には李克強副首相が英独両国を訪問したばかり。今回の温首相の訪問で、中国とEU諸国は、経済・貿易分野でいっそう結びつきを強めることになりそうです。
今回の訪問のキーワードになったのは「経済・貿易の成長」。これには「中国が欧州の経済再建と発展を促進する」(同行した楊潔篪=ようけつち=外相)という政策が反映しています。
経済関係強化
温首相はベルリンで、メルケル首相とともに初の中独政府間協議を主宰。両国の20人余の閣僚が協議し、両国間貿易を2015年までに現在の約2倍の2800億ドルに増やすことを確認しました。
EUは昨年、中国の貿易相手国として米国を抜いて第1位になりました。なかでもドイツとの貿易額は対EU貿易総額の4分の1を占めます(2009年)。温首相自ら「5年間で倍増」を提起し、ドイツとの貿易をけん引車にEUとの関係をいっそう強化する構えです。
温首相は、キャメロン英首相との会談でも、経済・貿易の拡大を強調。英国人400人が働く中国系自動車工場を見学するなどして、「互恵」を強調しました。
一方で温首相は、首脳会談後、「対話を通じて意見の食い違いを適切に解決しなければならない」と発言。中国がEUに求めている対中武器輸出の解禁や、中国を「市場経済国」と認定することを、EU諸国に働きかけ続ける姿勢を示しました。
EUは、1989年の天安門事件以来、対中武器輸出を禁止しています。この問題で、フランスは「解禁」の意向を表明しています。一方、英国は中国の軍事力増強への警戒から、慎重姿勢を崩していません。李副首相は1月に訪英した際、キャメロン首相に解禁を要求しましたが、キャメロン氏は応じませんでした。
EUは、「中国を市場経済国と認定しない」という立場です。中国はこれが貿易上の障壁になっているとして、「市場経済国」として認定するよう求めています。ドイツが柔軟姿勢を示しているものの、EU全体のものとはなっていません。
「国債を購入」
中国側のEUに対する交渉手段はユーロ圏の債務危機国の国債購入です。EUはギリシャやポルトガルなどが深刻な債務危機に陥り、単一通貨ユーロの信頼性が揺らいでいます。
温首相は、メルケル首相との共同記者会見で、「困難があれば救いの手をさしのべる」と述べ、EUの債務危機国の国債購入をアピール。またハンガリーのオルバン首相との会談でも「一定数のハンガリー国債を購入したい」と述べ、支援を表明しました。
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