2011年7月6日(水)「しんぶん赤旗」

主張

松本復興相辞任

政権に問われる“上から目線”


 被災地の岩手、宮城両県を訪問した際の暴言で、被災者と国民から大きな批判を受けた松本龍復興担当相が辞任しました。

 松本氏は岩手県の達増(たっそ)拓也知事に対して、「あれが欲しいこれが欲しいはだめだぞ、知恵を出せということだ。知恵を出したところは助け、出さないやつは助けない」などと発言しました。宮城県の村井嘉浩知事にも高飛車な物言いをしています。

 政府には被災者を救済し、復旧・復興に全力を挙げる責任があります。その自覚のかけらもなく、被災者の心を踏みにじる暴言であり、辞任は当然です。

遅れの責任を転嫁

 松本氏は辞任表明の記者会見で、「言葉が足りなかったり、荒かったりして被災者の心を痛めた」と謝罪しました。

 松本氏の発言に抗議が殺到したのは単に「言葉が足りなかった」り「荒かった」というだけではありません。その発言によって復興の遅れの責任を被災自治体と被災者に転嫁し、被災者に寄り添うどころか被災者への“上から目線”があらわになったからです。

 被災者や自治体からは多くの切実な要望や提案が出ています。それにもかかわらず政府の救援の動きは遅々として進まず、多くが手付かずで残されています。いまだに震災の避難者が11万人に及び、がれきの撤去も遅れ、生活と生業(なりわい)の基盤回復に政府が本格的に乗り出す姿もまったく見えません。

 民主党と自民、公明両党は被災者の生活再建を置き去りにした復興基本法を強行し、基本法がお墨付きを与えた復興構想会議も提言を発表しました。提言の内容は漁協・漁業者がこぞって反対している「水産特区」構想であり、「復興税」の名目による庶民増税です。実情を無視し、震災に乗じて「構造改革」を上から押し付けるやり方には、被災地から失望と怒りの声がわき上がっています。

 さらに未曽有の災害のなかで、被災者そっちのけで政争に明け暮れる民主党政権と自公の姿には、被災者も国民も怒りを通り越してあきれ果てています。

 そのときに救援・復興に責任を持つ大臣が、救援・復興の遅れは被災地自身の責任であるかのような暴言を口にしました。

 こんな人を任命した菅直人首相には重い責任があります。菅首相は6月27日、松本氏を復興担当相に任命した後の記者会見で次のようにのべています。「被災地に関しては最もよく理解している方でありまして、復旧から復興への継続性からも適任だと判断しました」―。首相の判断が根本から誤っていたことは明らかです。

自覚も反省もなく

 首相は松本氏が辞意を伝えた際、慰留に努めたといいます。与謝野馨経済財政担当相ら閣僚からも、言っていることは正しいなどと松本氏を擁護する声が上がっています。救援と復興に果たすべき最低の責任も果たさず、国民の信頼を大きく損なっている政権の実態について、この政権には何の自覚も反省もありません。

 松本氏の“上から目線”の暴言は松本氏本人に復興担当相の資格がないことを証明しています。それと同時に、被災者の救援と復興に対する民主党政権そのものの“上から目線”の姿勢が根本から問われます。





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