2011年7月3日(日)「しんぶん赤旗」
主張
玄海原発「再稼働」
「見切り発車」は許されない
定期点検で停止中の九州電力玄海原発(佐賀県)2、3号機の再稼働をめぐり、佐賀県知事らの同意を取り付けようと、「安全」を繰り返す海江田万里経産相らの態度に、批判が高まっています。東京電力福島第1原発の事故収束のめどもたたないなかで、海江田氏がいくら「安全性の確保は国の責任で対応する」といってもその保障がないだけでなく、全国で停止中の原発再稼働の突破口にする狙いが明白だからです。
「安全神話」押し付け
原子力発電所は13カ月ごとに原子炉をとめ、定期的な検査をすることが義務付けられています。再稼働には、国の「安全」確認とともに、電力会社と「安全協定」を結ぶ、地元自治体の同意が必要です。福島原発の事故後、関西電力の美浜1、高浜1、九電の玄海2、3の4基の定期点検が終了しましたが再稼働が見送られており、事故などの影響もあって、この4基を含む37基の原発が止まったままになっています。
海江田氏は停止中の原発の再稼働を各自治体に要請するにあたり、東電福島原発の事故後各電力会社に求めた「緊急安全対策」と「シビアアクシデント(過酷事故)対策」がいずれも実行され、「状況が変わった」と、「安全」を宣言しました。海江田氏と会見した佐賀県知事は、「安全性の確認の問題点はクリアした」とのべました。
しかし、海江田氏が「実行された」という「安全」対策は、津波でも電源が確保できるよう非常用電源車を配備したり、原子炉がメルトダウンして水素が発生しても爆発しないよう建屋に穴を開けるドリルを配備したりしたという程度で、本格的な対策には程遠い姑息(こそく)な取り繕いにすぎません。
海江田氏は、東電福島原発の事故は地震ではなく津波が原因だから、津波対策だけで十分のように説明していますが、福島原発は津波の前に地震で大きな被害を受け、事故に結びついた疑いも濃厚です。福島原発の事故原因や対策も明らかにならないうちに、他の原発は「安全」だということ自体、「安全神話」の新たな押し付けであり許されることではありません。
海江田氏は停止中の原発再稼働の条件に「立地地域の住民の理解」をあげています。この「理解」が一部の首長、議会の同意だけではかられないことは明らかです。経産省は先週、「住民説明会」を佐賀市内で開きましたが、国が選んだ「代表」に経産省の職員らが一方的に説明するアリバイ工作のような説明会でも「納得できない」など異論が続出しました。
これまで九電と「安全協定」を結んでいなかった佐賀県唐津市や長崎県松浦市など周辺自治体からも不安の声が上がっています。現時点での玄海原発再稼働がいかに非常識で、住民の意向とはずれているのかは明らかです。
住民の声にこたえよ
10日には日本共産党や住民団体が再稼働に反対する集会を玄海町内で予定するなど、地元でも反対の世論が高まっています。
「原発ゼロをめざす7・2緊急行動」でも示されたように、原発からのすみやかな撤退を求める国民的な議論も始まっています。こうした世論に背を向け、住民の同意さえないまま停止中の原発を再稼働させるような策動は、絶対に許されることではありません。