2011年7月2日(土)「しんぶん赤旗」
主張
被災地の復興
生活と生業の再建急ぐべきだ
民主、自民、公明などの各党は先週はじめの国会で東日本大震災復興基本法を成立させ、政府の復興構想会議も提言を発表し、復興担当相や原発担当相などの体制も決めました。第2次補正予算案の編成も浮上しています。
ところが被災地では、被災者の生活と、農業・漁業など生業(なりわい)を再建する対策が遅々として進んでいません。政府の対策が、被災者の切実な願いに背を向け、上からの計画を押し付けるものになっているからです。被災者に冷たい対策を改めさせ、被災者の立場に立った生活と生業の再建を進めさせることが急務となっています。
“人災”の責任は重大
東日本大震災から100日余りたった被災地では、長引く避難生活による生活の困窮や雇用問題の深刻化、相次ぐ「震災関連死」などが大問題になっています。
東日本大震災による被害は6月末までの集計で死者1万5511人、行方不明者7189人、建物の被害は全壊だけでも10万5895戸にのぼっています。避難所などへの避難者は、旅館・ホテルや親族・知人宅に身を寄せている人を含め、11万2405人にのぼります(6月16日現在)。宮城や福島では、知人宅などに身を寄せている人の数は把握されていません。
仮設住宅は着工ずみを含めても4万4千戸余りにすぎず、しかも場所が不便で、仮設に入れば食事の提供が打ち切られるなどのため、入居の辞退が相次ぐありさまです。被災者への血の通った対策がおこなわれていない証明です。
被災者の生活の困窮を浮き彫りにしているのが雇用の悪化です。震災による企業の倒産や解雇などで雇用保険の離職票を発行した件数は、震災翌日から6月19日までで12万6771件にのぼります。前年同期の2倍以上で多くの被災者が暮らしにも事欠く状態です。
このほか、長引く避難生活で健康を悪化させた「震災関連死」の増加や、住宅の再建や営業の再開の前に立ちふさがっている「二重ローン」問題など、事態は深刻です。地震や津波から命からがら助かった被災者が、十分な支援を受けられず生活を困窮させ、健康を破壊し、ついには住み慣れた土地からも離れなければならなくなるというのはまさに“人災”です。
被災者の日々の暮らしを立て直し、住宅や道路、農地や漁港などの被害を復旧し、産業を再建して雇用を拡大すべきなのに、政府の復興策は、それには背を向けています。復興基本法にはもっとも大切な「被災者の生活と生業の再建」が明記されていません。政府の復興構想会議の提言が農業の規制緩和や大規模化、民間企業を参入させる「水産特区」などを示し、「復興税」と称して増税まで負担させようとしているのは、まさに被災者の窮状を逆手に取った「構造改革」政策の押し付けそのものです。
国民的なたたかい広げて
被災地では多くの被災者が生活と生業を立て直す努力を始めています。いま重要なのはそれを支え、励ましながら、被災者が希望を取り戻せるよう、被災者の立場に立った、被災者支援と復旧・復興の対策を実行することです。
被災者が主人公になった復興を願う、被災者自身の運動も始まっています。被災者を支援し政府に力を尽くすよう迫る、国民的な運動を広げることが求められます。