2011年7月1日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
作家の玄侑宗久(げんゆうそうきゅう)さんは、滝桜で知られる福島県三春町の、お寺の住職でもあります。いま、月刊誌に「震災日記」を連載中です▼政府の東日本大震災復興構想会議の委員を務める玄侑さん。4月14日、初会合でした。翌15日の日記「晴れ、風あるが向きは確かめず。放射能が気にならなくなったというより、それどころじゃない」▼なぜか。「朝刊を見て『復興税』の文字に驚く。(会議で)そんな決議はしていない」。テレビ報道を録画で確かめる。「(復興構想会議の)議長は『個人的にはそう思う』と言っている」▼大学教授の知人から電子メール。“なんとしても増税したい財務省にとって、大災害は神風なんでしょう”。「俄(にわ)かに暗澹(あんたん)」と玄侑さん(『新潮45』7月号)―。復興構想会議の提言は、被災者にも負担を強いる消費税の増税をほのめかします▼別の増税話。B型肝炎患者への国の和解金を増税で賄う、といいます。原告団の代表、谷口三枝子さんが反論します。「B型肝炎患者は国民にとって増税の原因となる迷惑な人たちなのだという偏見をつくりだすことではないでしょうか」。人の災難につけ込む増税の大義のなさは、みすかされています▼さて、政府・与党が決めた“社会保障・税の一体改革”案。人々の将来不安につけこみ、10年代半ばに消費税を10%まで上げて社会保障の財源をつくるといいますが、やはり大義はみあたりません。なにより、肝心の社会保障は削るばかりで、よくする見通しを示していないのですから。