2011年6月30日(木)「しんぶん赤旗」
ハエ対策急務
被災地大量発生 感染症のリスク
専門家 二重ネットを提案
東日本大震災の被災地で大量発生しているハエへの対策が急がれるなか、国立感染症研究所の現地調査で、宮城県石巻市の中学校の避難所で捕獲したハエの9割超が、食中毒菌を媒介しやすい「イエバエ」であることがわかりました。同研究所は「今後も増えるとみられ、感染症のリスクが高まる可能性がある」と対策の強化を呼びかけています。 (西口友紀恵)
調査は、同研究所昆虫医科学部の小林睦生部長らが今月8日から、石巻市や気仙沼市など同県内4市町でおこなったものです。小林さんは「現地で発生しているハエは10種類に上るとみられ、時期と場所、えさとなるものによってその種類は違ってくる」といいます。
5月上旬以降、冷凍施設から流出し腐敗した魚に大量発生したオオクロバエは、暑さに弱いためすでに目立たなくなっていました。その代わりに増えていたのが家の中に頻繁に入り込む習性のあるイエバエでした。
イエバエの問題
石巻市の市立湊中学校の避難所では、8日から9日間、食事をつくっている場所の壁に30センチ四方の粘着トラップ板を3枚かけたところ、最も多い板では、431匹を数え、その98%がイエバエでした。
同中学校の近くには、津波で肥料工場から魚粉を含む有機肥料の袋が大量に流され、中身が飛散していました。
「イエバエの一番の問題は、屋外の排せつ物や汚物などをなめ、数分後には食卓の食品に止まって排せつをすることによって菌をばらまくこと。これまでも腸管出血性大腸菌O157の伝播(でんぱ)にかかわっていたとの報告があるなど、歴史的にも多くの感染症を媒介していることが知られています」と小林さん。
予算措置が必要
対策として重要なのは、大量発生の原因になっている有機物などを除去することと併せ、避難所や仮設住宅、近隣の一般住宅を含め生活空間へのハエの侵入を徹底して防ぐことです。
小林さんは、避難所の体育館の入り口は広いので、たとえば、入り口に二重にネットを張り、人はネットとネットの間を通って中に入るようにすれば侵入するハエを激減させることができるのではないか、と提案します。
さらに、▽窓にネットを張る▽蚊帳を利用する▽避難所の壁に少し濃いめの殺虫剤を塗布する(残留噴霧)などのきめ細かな対策ができるように、国や自治体がきちんと予算をつけることが必要だと話します。