2011年6月27日(月)「しんぶん赤旗」

大手が独占 地元は枠なし

仮設の発注 不透明


県内社長「疑問だらけ」

宮城県

 仮設住宅の完成が待たれている被災地ですが、宮城県では大手プレハブメーカーの業界団体に丸投げ発注が行われています。大手メーカーが注文を独占する中、不透明な「ブラックボックス」のままの発注実態に疑問の声が上がっています。


写真

(写真)プレハブ建築協会加盟企業が建設した仮設住宅=仙台市太白区

 宮城県では、約2万2800戸の仮設住宅が必要とされる中、1万7733戸が着工・完成しています。(22日時点)

 このうち山元町が県内業者に260戸分を発注していますが、残り約1万7470戸は大手プレハブメーカー34社に発注したものです。県外の大手メーカーによる独占受注状態といえます。

業界丸投げ

 一般的に公共工事の発注は、複数の業者による入札で行われます。災害時の仮設住宅建設などでは、その緊急性から随意契約が用いられます。しかし宮城県の場合は、発注の不透明さが際立っています。

 まず宮城県が建設予定地と建設戸数、1DKや2DK、3Kといった住宅の仕様を決めます。

 県からの情報はプレハブ建築協会を経由して、会員企業34社に送られます。

 会員企業は、建設見積もり額を県に提示。県は1戸当たりの基準単価451万円を下回っていれば、提示した企業に発注するという流れです。

 当初は、宮城県と同様に業界団体丸投げ方式をとっていた福島県や岩手県ですが、4月に方向修正。地元発注枠をつくり、地元企業に発注しました。

 地元発注枠を設けていない宮城県は選考基準や過程を明らかにしないまま「施行能力」を持つ県内業者77社のリストを作成しました。しかし各自治体が発注する際の“参考”として配布したものの、ほとんど活用されずじまい。人手不足の自治体に代わって、県が代行してプレハブ建築協会に丸投げする状況のままです。

出来レース

 宮城県のリストに登録されているという県内のある建設会社の社長は、いぶかります。

 「リストを見せてくれと県庁に行っても登録業者の私たちにすら見せてくれないし、見せない理由もはっきりしない。私たち地元業者には、わからないことばかりだ。県外大手が受注する“出来レース”かと勘ぐりたくなる」

 県土木部住宅課の担当は「地元発注にこだわっていない。大事なのは、建設スピードを落とさず、上げること」といい、丸投げ方式を擁護します。

 しかし同社長は「請け負うからには責任を持ちたいので資材も確保し、職人にも声をかけたのに、一軒も注文が来ない」と憤ります。

 業界団体のプレハブ建築協会の担当者は「協会では、県からの建設要請を会員企業に取り次いでいるだけ。後は県と個別企業の交渉で進めており、ここで仕事を割り振ることはない」と説明します。

 大手メーカーが建設した仮設住宅の中には、建て付けが粗悪だと被災者から苦情が出ているものもあります。

 県外大手のプレハブメーカーが、仮設住宅の受注で増益が見込まれる一方で、数百戸分の関連設備を手がけた仙台市内の設備会社社長は「普通の官公庁発注工事に比べても利益率が薄い仕事だった」といいます。

 社長は「建材などすべて大手メーカーの持ち込みで、こちらが得たのは労賃だけ。これでは一向に復興につながらない。県がいうスピード重視は名ばかりで、向いている方向が違うだけでは」といいます。(矢野昌弘)





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