2011年6月27日(月)「しんぶん赤旗」
複雑な「子育て新システム」
幼保一体化のはずが…
名前は一緒 中身ばらばら
菅内閣は、公的保育制度を抜本的に変える「子ども・子育て新システム」の6月中のとりまとめを目指しています。制度設計などを議論してきた作業部会に16日、「最終とりまとめ案」が示されました。「子ども・子育て新システム」導入の看板に掲げられたのが、幼稚園と保育所を「一体化」して「こども園」にする「幼保一体化」です。いったいどうなったでしょうか。(鎌塚由美)
最終案からは、施設の名前はどれも「こども園」なのに、中身はばらばらだという、分かりにくい仕組みがつくられることが明らかになっています。
「新システム」では、現行の幼稚園、保育所の「垣根を取り払い、新たな指針に基づき、幼児教育と保育をともに提供するこども園に一体化」(基本制度案要綱)するはずでした。
待機解消いうが
民主党政権は、幼稚園と保育所の「一体化」を“待機児童の解消”策の柱にあげてきました。定員割れの幼稚園に保育所の待機児童を受け入れさせれば“待機児童が解消する”というもので、歴史も役割も違う保育所と幼稚園を強引にくっつけるものでした。
そのため、昨年9月に「新システム」を検討する作業部会に現行の保育所や幼稚園を廃止する案が示されると、幼稚園団体が強く反発。結局、幼稚園側に妥協して、保育所は幼稚園と一体化させた「総合施設」に移行させる一方、幼稚園は幼稚園のまま残れる仕組みとなりました。
さらに幼稚園側が、経験のない乳児(0〜2歳児)の保育に慎重姿勢を示しているため、「総合施設」には乳児の受け入れを義務づけず、0〜2歳児対象の保育所は、保育所として残すことになりました。
認可外でも指定
新システムでは指定制度が導入され、従来の認可保育所、認可幼稚園のほか、これまで認可外だった施設も一定の基準を満たせば「こども園」と指定されます。「総合施設」、幼稚園、乳児保育所、従来の認可外施設と、実態はばらばらでも、制度の枠組みはすべて「こども園」となります。
幼稚園は指定を受けないことも可能です。指定を受けない施設の利用者には、利用料の補助が出ません。補助なしでも利用できる経済力のある保護者向けの“ブランド幼稚園”になると予想されます。
当初は、施設だけではなく、幼稚園教育要領と保育所保育指針(それぞれ文部科学省と厚生労働省が告示)も「こども指針」に一本化するはずでした。しかし、幼稚園も乳児保育所も残る結果、幼稚園教育要領も保育所保育指針もそれぞれ残ることになりました。
とりまとめ案が示された作業部会では、「こども指針も一本化されるはずではなかったのか。寝耳に水だ」との声が出たほどです。
結局、幼保一体化は看板倒れ。幼児教育と保育に関する二重行政を一元化すると宣伝されていましたが、「総合施設」を所管する「子ども家庭省」が創設されることになると“三重行政”となる仕組みができようとしています。
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