2011年6月27日(月)「しんぶん赤旗」
主張
「一体改革」迷走
財界奉仕の路線に出口はない
民主党政権は社会保障と税の「一体改革」の成案の決定を27日以降に先送りしました。
当初は「一体改革」に関する「集中検討会議」がまとめた社会保障「改革」案をもとに、20日の会合で政府・与党として成案を取りまとめる予定でした。しかし、政府・与党内から異論が噴出して20日には決定できず、24日に民主党内で再度協議したものの意見を集約することができませんでした。
大きな矛盾を抱えて
「集中検討会議」の「改革」案は消費税を2015年度までに10%に増税すると明記しました。ここに大きな批判が上がっています。閣僚からも大震災の惨禍の中で消費税増税を決めていいのかという発言が出ています。
消費税増税は被災者にも重い負担になり、長期的に復興を支える土台でもある日本経済そのものに大きな打撃を与えます。
矛盾はこれだけではありません。「一体改革」は“社会保障のため”を口実にして消費税率の引き上げを具体化し、国民に受け入れを迫ることが狙いです。
ところが「集中検討会議」の「改革」案は医療費の自己負担増、介護給付や生活保護の抑制、年金の支給開始年齢の引き上げなどを列挙しました。「必要な機能」を充実させるとして一部の制度の見直しを掲げましたが、同時に「徹底した給付の重点化・制度運営の効率化」を行うとしています。
「改革」案に盛り込まれた高額療養費の負担軽減など患者の切実な要求に応えるのは当然です。しかし、その代わりに患者の窓口負担に一定額を上乗せする「受診時定額負担」を同時に検討するとしています。定額負担は低所得者や医療にかかることが多い乳幼児、高齢者、慢性疾患の患者ほど負担が重くなる医療制度の改悪です。「改革」案は自公政権以来の社会保障の抑制路線を新たな装いで強化するものにほかなりません。
低所得層ほど負担が重くなる逆進性が強い消費税は社会保障で支えるべき人に重い負担をかぶせます。社会保障の所得再分配の機能を台無しにする消費税は、社会保障の財源にもっともふさわしくない税制です。たとえ本当に社会保障を充実させるためであっても、政府には消費税など庶民負担増に頼らない財源を確保する責任があります。
にもかかわらず「改革」案が打ち出したのは社会保障抑制と消費税増税の最悪の組み合わせです。閣僚からも「世間の常識や一般国民の常識と全く逆のことをわれわれはしようとしている」(8日の政府税調、鈴木克昌総務副大臣)という声が上がるほどです。ここにも大きな矛盾があります。
消費税頼みの転換を
家計の冷え込みと膨大な赤字という日本の経済・財政が抱える困難を悪化させずに財源を生み出すことが求められています。いまこそ大企業の巨額の余剰資金と急回復する利益を活用すべきです。
「一体改革」成案の案文は「企業の国際的な競争力の維持・向上」が必要だとして法人税率引き下げを明記しています。旧来の財界・大企業奉仕の政治を続ける限り、消費税に頼らずに社会保障の財源を生み出す“出口”を見つけることはできません。
大企業にものが言えず、財源と言えば消費税頼みの姿勢が民主党政権を迷走させています。