2011年6月27日(月)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
自宅や家族をなくし、避難所で暮らす被災者がこれを見て希望を持てるでしょうか。復興構想会議がまとめた提言です▼「私は復興事業の第一は、人間の復興でなければならぬと主張する」。1923年に起きた関東大震災のあと、復興の根本理念ともいうべきことをこう宣言した経済学者がいました。大正デモクラシーの時代に吉野作造とともに言論団体「黎明会」を結成した福田徳三です▼当時、東京商科大学(現一橋大学)教授だった福田は、被災地を調査し、「人間の復興とは大災によって破壊せられた生存の機会の復興を意味する。(中略)生存機会の復興は生活、営業および労働機会の復興を意味する」と断言しました。「復興経済の原理及若干問題」という論文(『経済学全集第六集』に収録)にあります▼この考え方が大切だと説いている岡田知弘京都大学大学院教授によれば、この対極にあるのが道路や港湾などの大規模開発を優先し、住民の暮らしを後回しにする方針だと、指摘します▼実際、阪神大震災の折には「創造的復興」の名で「人間の復興」よりも神戸沖空港建設などが優先され今も被災者は苦しんでいる。震災復興をめぐって二つの道がせめぎ合っているのだと。明快です▼特区だ、国境を越えた社会経済活動の進展への対応だ、という菅内閣の方針がどちらの側に立っているかは明らかです。「被災者の生活となりわいの土台の再建」。過去のにがい教訓を生かし、被災者本位の復興こそ延長国会の務めです。