2011年6月26日(日)「しんぶん赤旗」
主張
原発再稼働
住民同意ない再開許されない
海江田万里経済産業相が、「定期点検」などで停止している原発の再稼働を関係自治体に要請したのをうけ、原発の運転再開をめぐる動きが活発になっています。
原発の運転は、原発が立地する自治体がそれぞれの電力会社と結んだ「安全協定」などで関係自治体の同意が条件になっています。東京電力福島第1原発の事故で原発の危険性が浮き彫りになり、多くの住民が安全性に不安を抱き、再開に反対しています。福島原発事故の収束のめどもたたないのに、政府が再稼働をおしつけるなどというのはやめるべきです。
「安全宣言」は成立しない
海江田経産相らは、政府が各電力会社に要求していた津波による全電源喪失や、シビアアクシデント(過酷事故)への緊急対策が実行されたことを再稼働要請の根拠にしていますが、東電福島原発の事故は、その全体像も原因や経過も明らかになっておらず、政府が要請した緊急対策が実行されたからといって、それで「安全」などといえるものではありません。
実際、各電力会社が実施した対策も、非常用電源車を配置したり、原子炉建屋が水素爆発で破壊しないよう穴を開けるドリルを配備したりしたなど、地震対策でも津波対策でもなく、とても「安全」と呼べるものではありません。
日本共産党の志位和夫委員長が23日の菅直人首相への申し入れで、東電福島原発事故で政府が国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書に照らしても、対策はごく一部で、「『安全性が確保された』などとは到底いえない」と批判したのは当然です。
東電福島原発事故を受け、政府の原子力安全委員会は安全指針など、原発の安全確保策の見直しに着手しています。技術的に未完成で、いったん事故を起こせば取り返しのつかない被害を及ぼす原発が、どんなに対策を講じても絶対安全などといえないことは明らかですが、少なくとも政府の「安全」確保策さえ定まっていないのに、現在の原発が「安全」などということはできません。
各地の自治体が各電力会社と結んだ「安全協定」は、安全確保に「万全の措置」を求めるとともに、運転に際しての「協議」や「事前了解」を定めています。海江田経産相の要請に多くの知事は「論評に値する内容がない」などと批判しています。「協定」の条件が満たされていないのは明らかです。
再稼働要請の撤回を求めた志位委員長の申し入れに、枝野幸男官房長官も「地元の知事が『絶対に反対』といっているものを再稼働させることはできない」と答えました。政府は「安全宣言」が成り立たないことを認め、再稼働要請を撤回すべきです。
住民の意向反映してこそ
原発が立地する一部の自治体では、議会や首長が再稼働に向けて動きだしているところもあります。しかし、東電福島原発の事故以降、住民の多数は原発に対して不安を強めており、世論調査でも原発の縮小・廃止を求める声が圧倒的です。議会や首長は住民の声に耳を傾けるべきであり、「安全協定」に参加していない周辺自治体の不安にも配慮すべきです。
政府は原発からの速やかな撤退をこそ決断すべきです。そのためにも、住民の合意のない原発は動かすべきではありません。