2011年6月25日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 ジョン・ガリアーノ氏は、イギリス生まれの50歳。パリで活躍する、現代を代表する服飾デザイナーです▼大胆なデザインで、老舗クリスチャン・ディオールを立て直しました。しかし、いまは被告の身。ユダヤ人差別の言葉をはいたとして、侮辱罪に問われています。先日、公判が始まりました▼訴えでは、彼は2月、カフェで女性に「汚らしいユダヤ人の顔をした売女(ばいた)は死ね」などとののしったそうです。映像も流出しました。彼が、「ヒトラーが大好き」と語ったりしている動画です▼公判では、「覚えていない」「私はアルコールや薬物の中毒に苦しんでいる」とのべたガリアーノ氏。ヨーロッパでは、デンマーク人映画監督ラース・フォン・トリアー氏の事件も記憶に新しい。彼は記者会見で「ヒトラーに共感する」と話し、カンヌ映画祭から追放されたのでした▼しかし、そんな風潮に立ち向かうように“ヒトラーの時代”の真実を伝える努力もやみません。日本で7月に公開される映画「黄色い星の子供たち」は、実話にもとづき、ナチス占領下パリの“ユダヤ人狩り”を描きます。1942年、1万3千人近くがいっせいに捕まり収容所へ送られた、ヴェル・ディヴ事件です▼引き裂かれる家族、子どもたちの友情。襲う飢え。陰ながら1人でも多く救おうと試みるパリの警官や消防士、看護師。ナチスに協力する政権が起こした祖国の恥の歴史と向き合った、フランス映画人の勇気から、わが国も教えられるところが多いようです。





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