2011年6月25日(土)「しんぶん赤旗」

主張

オバマのアフガン演説

外国軍撤退こそ真の始まり


 米国がテロへの「報復」としてアフガニスタンで戦争を開始してから10年。ベトナム戦争も超えるこの長い戦争は、アフガン市民と米軍などの兵士に日々犠牲を強いています。戦争を一刻も早く終わらせるよう求める声は米国内でも一段と広がり、リベラル層を超えて保守層にも浸透しています。

追い詰められる米国

 「この戦争を責任を持って終わらせよう」「米国の再建に集中すべき時だ」―オバマ米大統領の米国民への呼びかけ(22日)は、戦争終結への期待をもたせるものです。では戦争をどう終わらせるのか―それこそがアフガン国民も世界も聞きたかったことなのに、その展望は示されませんでした。

 大統領が示したアフガン駐留米軍を今年中に1万人、来夏までに計3万3千人削減という計画は、自身が2009年に行った増派を元に戻すだけのものです。その後もアフガンには6万8千人もの大軍が張り付けられます。「大きな試練は残っている。戦争終結への始まりであって、終わりではない」と戒めてもいます。

 浮かび上がったのは、他国に大量の軍隊を送り込んで、戦争に「勝利」する力などない超大国の姿です。イラクで4500人、アフガンで1500人の米兵を犠牲にし、財政ひっ迫と経済悪化のなかでも戦費に1兆ドルも使ってしまった―「米国にとって困難な10年間だった」というオバマ大統領の嘆きは、自らの誤った政策に追い詰められる米国の現実です。

 アフガン戦争は、2年前の増派によって決定的に「オバマの戦争」となりました。戦争終結はオバマ大統領の責任です。選挙が近づけば近づくほど、大統領は終結への歩みをはっきりさせるようますます迫られるでしょう。ゲーツ国防長官は月末の退任を前に「米国の歴史上、人気のある戦争などなかった」と語っています。

 米軍の介入は米国民に重荷をもたらしただけではありません。

 アフガン国民は、駐留する米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍に、命と生活を日々脅かされています。「国民は民家が空爆され、罪のない市民が殺されるのを見たくないと思っている。夜間には自宅に(外国軍が)踏み込み、(家族を)拘束する」―米国の支持のもとで政権を担うカルザイ大統領さえ、このままでは外国軍は「占領軍」になってしまうと警告しています。

 このなかでは安定した国家再建など望むべくもありません。和平をめざすには主権の回復が前提であり、外国軍の撤退は不可欠の条件です。

 オバマ大統領は国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンの殺害を「勝利」と誇り、パキスタンで「暴力的過激主義の根を絶つ」と表明しました。しかし、パキスタンでもこうした軍事作戦がテロを拡散させ、社会を不安定化しているのが現実です。

長い戦火の下で

 旧ソ連軍が侵攻して以来32年。アフガン国民はあまりに長い戦火の下にあります。国家を再建し、国民生活を向上させるにも、なにより平和が必要です。

 オバマ大統領は米軍の任務が「戦闘から支援に変わる」ことさえ、まだ3年後だといいます。長すぎます。外国軍は速やかに撤退すべきです。





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