2011年6月23日(木)「しんぶん赤旗」
原発撤退へ 立地県はいま
活断層集中帯に15基
福井 半数が30年超の老朽原発
福井県には全国一多い15基の原子力発電所が活断層の集中地帯に立地しています。しかも、運転開始からすでに8基が30年を超え、そのうち2基が40年、1基が39年を経過しており、多くが老朽原発です。住民は、直下に活断層がある原発群や、プルトニウムを燃料とする危険な高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を、切実に願っています。 (福井県・山内巧)
小浜市議会「期限定め脱却を」
福島第1原発は、運転開始から40年を経過した1号機を含む6基すべてが30年を超えており、老朽原発が巨大地震に襲われたケースとして注視されています。福井県も「高経年化の影響が今回の事故にあるか検証するよう国に求めている」(岩永幹夫・原子力安全対策課長)ところです。
西川一誠知事は、判明した限りの知見を反映して暫定的に新たな安全基準を示すよう国に求めているのに対し、国からは示されない現状を批判し、検査中の原発の運転再開を認めない方針です。現在は事故の調査で停止している敦賀2号機も含め、7基が止まった状態です。
原発の安全性を求める嶺南連絡会の坪田嘉奈弥代表委員は、2004年に美浜原発3号機(加圧水型)で2次系配管が破裂し、高温蒸気を浴びた下請け労働者11人のうち5人が死亡した事故にふれ、「1センチメートルあった配管肉厚が1ミリメートル前後になっていた。3号機でさえ老朽化と点検の不備の影響はこの状態だ。いわんや1、2号機は、いつ何が起きるかわからない」と危機感を表します。
危険な状態
福島の事故原因をめぐっては、東京電力がこれまで“想定を超える津波”で説明してきましたが、最近発表した解析結果から、3号機では原子炉の冷却ができなくなった原因として、地震の揺れによる緊急炉心冷却装置(ECCS)の配管破損の疑いが浮上してきました。今回の地震で3号機は、想定した基準地震動を約15%上回る揺れを観測したのです。
敦賀半島に立地する、敦賀原発(日本原子力発電)、高速増殖炉「もんじゅ」(日本原子力研究開発機構)、美浜原発(関西電力)は1キロメートル以内の至近距離に活断層がある、世界に例がない危険な状態です。
敦賀原発は敷地内に浦底断層があり、美浜原発はC断層、「もんじゅ」は白木―丹生断層とC断層が直下を走っています。
ほおかむり
敦賀半島の住民からは、「ここは住めるところではない。福島の事故を見たら、ああやばいなと思うのが普通だろ。もう原発はなくしてほしい。(県外の)息子には帰ってくるなと言っている」(55歳の男性)、「何かあったらこわい。祈るしかない」(55歳の女性)との声が聞かれます。一方、「息子が原発にいっている。絶対安全であるのなら、原発は必要だ」(76歳の女性)との声もあります。
関西電力は敷地内には活断層はないとして原発の建設をすすめてきました。
「もんじゅ」は旧耐震指針制定(78年)後に設置許可(83年)されましたが、白木―丹生断層を活断層とは見ず、C断層の場所にみられた断層については「敷地に与える影響は小さく無視できる」と評価しました。
電力3事業者は耐震指針改定に伴う再評価で08年、これらの断層への認識をあらためました。
坪田氏は「もんじゅ」について、「(建設する当時)活断層の上には原発は造らないと言っておきながら、わかるとほおかむりするのはいかがなものか」と批判します。
活断層との距離が近いほど、地震動とともに、隆起や地割れなど、地形が変形する影響が心配されます。
原発が集中立地する嶺南地域の中心部に位置する小浜市の議会は9日、「期限を定めて原子力発電から脱却し、代替エネルギーに転換した新たなエネルギー政策を定めること」「30年を超え、高経年化している原子力発電所の運転の延長を認めないこと」などを国に求める意見書を全会一致で採択しました。
全原発を廃炉に
元原発労働者で、原発問題住民運動全国連絡センターの山本雅彦代表委員=敦賀市=の話 多くの地震学者や識者が「地震で最も危険な原発は、浜岡についで敦賀が危ない」と指摘しています。東京電力は福島原発の地震データについて、原発の基盤面の地震動しか公表せず、いまだに隠しています。しかし、同原発から約100キロメートル北にある宮城県の女川原発では、タービン建屋などで1000ガル(加速度の単位)を記録しています。地震の多い日本では1000ガル以上は想定すべきだというのが多くの識者の意見です。しかし、原発事業者や敦賀市は、「若狭では大きな地震は起きない」と、福島原発の教訓から学ぶ姿勢を示していません。敦賀半島にあるすべての原発は運転を中止し、廃炉にすべきです。
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