2011年6月22日(水)「しんぶん赤旗」
会期末国会 被災者の苦境よそに
首相と民自公が駆け引き
会期延長幅も決められず
被災者の苦境をよそに退陣時期をめぐり菅直人首相と民自公3党が政争に明け暮れ、22日に会期末を迎える国会が会期延長すら決められない事態に陥っています。(国会取材団)
民主党は21日、会期延長幅を提示するために午前中に予定されていた与野党書記局長・幹事長会談を2回も延期したあげく22日への先送りを各党に通知しました。
3党幹事長が談合
自民党の逢沢一郎国対委員長は21日、党の会合で「民主、自民、公明3党幹事長の間では国会を50日間延長し、第3次補正予算案は新しい首相が対応することで合意していた」と暴露。しかし、「菅首相と民主党執行部の間で折り合えないということだ」と述べ、首相と民主党執行部の調整がつかなかったために合意が立ち消えになったことを示唆しました。
もともと、民主党の岡田克也幹事長は20日夜の与野党書記局長・幹事長会談で、延長の理由について第2次補正予算をあげたものの、具体的な会期幅は示さず、「4カ月程度の延長も考えている」と述べていました。
3案件成立条件に
同時に「総理は特例公債法案、2次補正、(再生可能エネルギーの)固定価格買い取り制度法案に強い思いがある」とも述べ、首相が3案件の成立を条件にしていることを示唆していました。
これに対し、自民党の石原伸晃幹事長は「総理の延命に手を貸すことはできない」と、首相が辞任時期を表明しないままの大幅な延長に反対を表明。一夜開けた21日には、3党幹事長がタッグを組んだものの、あっけなくとん挫してしまったのです。
こうした駆け引きによって延長する国会で首相や3党は何をしようとしているのでしょうか。
首相が成立まで責任を果たしたいという特例公債法案は、大企業・大資産家優遇の予算を執行するため、赤字国債を発行するためのものです。ところが、3党は同法案の成立に向けた環境づくりとして子ども手当の支給額の削減などを協議しています。
予算も“政権延命”
2次補正予算について、首相は当初、復興構想会議の報告を待ってからとして8月に先送りしようとしていました。ところが、早期退陣を迫られることを恐れた首相が予算編成を指示したことで会期延長のテーマとして急浮上。伝えられる中身は、二重ローン対策でも零細な業者が救われない仕組みが検討されているなど被災者の願いに応える本格的な予算とはなっていません。
急浮上した再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度法案も、首相が「私の顔を見たくないなら早く通したらいい」と発言したように、自らの政権延命のために持ち出したものです。
しかし、政争と駆け引きを繰り広げる民主党と自公両党の間に政策的違いはありません。自民党の石原幹事長は19日のNHK番組で、首相の退陣が必要なのは、民主党との信頼関係をつくるためで「(今後は)大連立をしんしに考えていかないと」と語っています。
被災者の声反映を
21日、民自公3党の談合で新法として提出されていた税法改定案が参院の委員会で可決されました。証券優遇税制の延長などを含むもので、反対したのは日本共産党だけでした。
日本共産党は、中身のある2次補正予算の確立など被災者支援のための会期延長は必要だと主張し、被災者の声を反映する政治の役割を果たすよう要求。3党による密室談合を押し付ける動きに反対してたたかうことを明らかにしています。
表では政争を繰り返し、裏では悪政を共同で進める―まさに被災者不在の政治を改めることが求められています。
“内輪もめの場合じゃないべ”
福島県川俣町で酪農を営む女性(65)は、東京電力からの損害賠償の仮払いも進まない中での政局に憤り、「みんな、内輪もめとか降ろすとか降ろさないとかやっている場合じゃないべと怒っている」と語ります。
エサの牧草は放射能汚染の可能性があるため北海道から仕入れる相談をしています。借金して手に入れた農機具も放置されたままとなり、賠償される見通しはまだありません。「対策が遅い。どのくらいの被害があるか調べて東電に支払わせることが必要なのに…」と話しました。
「ニュースで毎日やっているけど気にくわない。菅さんがやる、やらないということに関心はない」と言うのは岩手県陸前高田市の仮設に住む男性(39)=養殖業=です。
自宅が津波で流されたなかでのつらい生活が続きます。
「二重ローンの問題もある。10年分ぐらいローンが残っていて、家を建てるのも厳しい。とにかく目に見える形で前に進むようにしてほしい」と訴えました。