2011年6月21日(火)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 詩人・谷川俊太郎さんに『いっぽんの鉛筆のむこうに』という絵本があります。鉛筆1本を作るために、どれだけの人が関わっているか。そこには黒鉛を掘る人、より分ける人、木を切る人、木を運ぶ人…と、数え切れないほど多くの人がいて、それぞれの人の生活がある、というお話です▼NHKの番組「あさイチ」を見ながら、ふとこの絵本を思い出しました。こちらは震災による企業の倒産が増えている、という愉快ではない話です。17日時点で184社が倒産。そのうち89%は、取引先の被災や風評被害など間接被害だそうです▼例えば、香川県で中古車の洗車をなりわいにしていた男性の収入が3分の2に―。大もとには、自動車の部品工場が被災したことがありました。自粛ムードでコンサートが中止になり、倒産したイベント会社も。“風が吹けば桶(おけ)屋(や)がもうかる”の例えも、こういうのは勘弁願いたい▼“便乗解雇・便乗賃下げ”というのも横行しているようです。震災を理由にすれば、どんな無法も許される、という風潮は、正さなければなりません。コメンテーターの弁護士の助言は、労働組合をつくることでした▼昨日付本紙1面の記事は、励まされる実例です。仙台市の複合娯楽施設で、大震災を口実にした解雇は許さない、とアルバイト107人が労組を結成。最初は6人からです。役員が全員20〜30代というのも、希望が見えます▼泣き寝入りしないために、どうするか。1人の力は小さくても、束ねれば大きな力になります。





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