2011年6月21日(火)「しんぶん赤旗」
主張
熱中症防止
暑さ我慢せず、十分な対策を
6月も下旬になり、各地で気温が30度を超す日も出始めています。懸念されるのは、昨年大きな被害を出した熱中症の再来です。暑さ対策をとり、被害を防ぐことが、いまから必要です。
とりわけ今年は、東京電力福島原発の事故で「電力不足」が予想されるため、節電のために冷房を控える動きも強まっています。冷房の効かせすぎなど、電力の浪費を防ぐ対策はもちろん必要ですが、そのために必要な暑さ対策をおこなわず、熱中症で健康を損なうなどというのは本末転倒です。
恐ろしさを軽視せず
熱中症は高温に長くさらされ、体の水分や塩分のバランスが崩れて起こる症状です。意識を失い、最悪の場合亡くなることもあり、症状が回復したあとも内臓などに影響が残ります。昔からよく知られている病気だからと、軽視しないことが大切です。
昨年は6月の梅雨明け以降気温が一気に上がり、最高気温が35度を超す「猛暑日」や、夜になっても気温が25度以下に下がらない「熱帯夜」が続いたため、熱中症の被害が相次ぎました。消防庁の調べでは、昨年7〜9月に、熱中症の疑いで救急車が搬送した人は全国で5万3843人にのぼり、高齢者を中心に亡くなる人が各地で相次ぎました。
かつて熱中症は、炎天下、屋外での農作業やスポーツなどをする人、溶鉱炉など高温の作業所で働く人に多いといわれてきました。ところが最近は、屋内でも、窓を閉め切り、換気をおこなわなかったなどで熱中症にかかる例が相次いでいます。実際、昨年熱中症で亡くなったかなりのケースが、高齢者や幼児がエアコンもつけず、窓も閉め切ったままで寝ていて亡くなっています。日常生活での注意が求められます。
環境省や厚生労働省は、熱中症は、予防法を知っていれば防ぐことができるといいます。暑さを避ける、服装を工夫する、こまめに水分や塩分を補給する、とくに急に暑くなりそうな日は注意するなどです。ふだんから暑さにそなえた体力づくりに取り組み、二日酔いや寝不足、食事抜きなどを防ぐことも重要です。
気温の変化が感じにくいといわれる高齢者や寝たきりの人、体温が十分調節できない幼児などに対しては、周りの人の注意が重要です。昨年の異常な暑さの中では、学校や高齢者の部屋にエアコンを設置するための公的な援助や、暑い日中、高齢者などが避難できる公共施設の開放などが課題になりました。熱中症に備え、いまから準備することが必要です。
節電も行き過ぎないで
今年とりわけ心配されるのは、「電力不足」のキャンペーンが強まるなかで、節電のために冷房などを控える傾向が強まっていることです。節電はもちろん必要ですが、節電を呼びかける政府の文書も、「行き過ぎた節電は、熱中症等の健康被害を生じるおそれもあるため…健康への配慮等についても十分周知する」と注意を喚起しています。行き過ぎは禁物です。
もともと一般の家庭での電力消費は、企業などの大口需要家に比べて、それほど大きいわけではありません。ほんとうの節電のためには、夜中まで働かせ、「24時間型社会」を押し付けている、エネルギー浪費社会を見直すべきです。