2011年6月19日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「その時、まるで崩れ落ちんばかりに/山が揺れ動くのが感じられた。私はぞっとした。/死地へ赴く人が覚えるような寒気が背筋を走った」▼ダンテ『神曲』が描く地震のありさまです(平川祐弘訳)。ダンテ自身が地獄・煉獄(れんごく)・天国をめぐる、想像の物語『神曲』。作中で彼は、人々が罪をきよめながら山を登ってゆく煉獄で地震にあいます▼『神曲』によれば、地震は、地球内の空洞にたまる乾いた空気が噴き出して起こるといいます。しかし、煉獄で体験した揺れは違うそうです。魂がきよめられたと誰かが自覚したとき起こる地震だった、と▼14世紀初めの作品ですから、宗教色がつよい。しかし、ここで思い当たります。ダンテの生きたイタリアは、ギリシャと並ぶヨーロッパ有数の地震国です。アフリカ・プレートとユーラシア・プレートがぶつかる辺りにあるからです▼イタリアが、国民投票で原発の再開を拒みました。イタリアは、チェルノブイリ原発事故の翌年1987年、国民投票で原発を止めています。多くの国民が、地震・火山の影響を心配しました。現政権が考えた再開も、福島原発の事故の直後に、やはり止めました▼いま、わが国で話題になっています。日・独・伊3国同盟なるか―。ドイツに続きイタリアも脱原発へ。日本が加われば、3国そろいます。戦前の日・独・伊3国同盟は、世界大戦と大虐殺へとつきすすみました。もし、脱原発へともに歩むなら、人命優先の新しい時代をひらく“同盟”ができます。